利用報告書

グラフェン成長技術開発
村上俊也
株式会社東芝

課題番号 :S-16-NM-0082
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :グラフェン成長技術開発
Program Title (English) :Raman analysis of graphene
利用者名(日本語) :村上俊也
Username (English) :T. Murakami
所属名(日本語) :株式会社東芝
Affiliation (English) :Toshiba Corporation

1.概要(Summary)
グラフェンの高品質成長を検討している。本研究では基板と金属層に挟まれたグラフェン試料のラマン散乱評価を実施した。基板側からレーザーを照射することで試料のラマン評価が可能かどうか、およびグラフェンの成長形態を調査した。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 ラマン顕微鏡
 電気炉
 プラットフォームではこれら装置の取り扱い説明を受けた。
【実験方法】
用いたグラフェン試料は固相成長法により成長させたものであり、Fig.1に示したような構造をしている。グラフェンの結晶性はラマン散乱分光法で評価可能であるが、グラフェンが基板と金属層に挟まった構造をしているため、表面側からのラマン測定ができない。金属層は酸等で除去ができるが、酸等によってグラフェンへダメージが誘起され、成長後のグラフェンの特性を十分評価できないという問題がある。さらにこの手法では、評価にかかる時間も余計にかかってしまう。そこで、本研究では基板に透明な石英基板を用いることで、裏面側から顕微ラマン評価用のレーザーを照射して間に挟まったグラフェンを測定できるように工夫した。このとき、基板の厚み(0.5mm)以上のワーキングディスタンス(WD)を持った対物レンズを使用する必要があるため、WDが4.5mmの長作動レンズ(20倍)を使用した。励起波長は532nmで、ラマン測定システムはナノフォトン社のRmanPlusを使用した。

Fig.1 Graphene sample
3.結果と考察 (Results and Discussion)
Fig.2に試料の表側と裏側から測定したグラフェン試料のラマンスペクトルを示す。裏面側から測定したスペクトルには、1350cm-1付近に欠陥誘起なDバンド、1580cm-1付近にC=C振動様式のGバンド、2600cm-1付近に二重共鳴由来で電子状態を反映する2Dバンドと呼ばれるピークが確認できた。一方で、表面側から測定したスペクトルにはこれらの信号が見られなかった。このことから、裏面側からのラマン評価の有用が示されたと共に、グラフェンは予想通り基板側にのみ成長していることが確認できた。

Fig.2  Raman spectra of graphene. *: system noise

4.その他・特記事項(Others)
謝辞:この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものである。本研究の一部は、産業技術総合研究所ナノプロセシング施設において実施された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
村上俊也,磯林厚伸, 井福亮太, 松本貴士,梶田明広,第64回応用物理学会春期学術講演会,平成29年3月16日.
6.関連特許(Patent)
なし。

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