利用報告書

グラフェン膜表面の殺ウイルス機能化
河原敏男
中部大学生命健康科学部

課題番号                :S-20-NI-0040

利用形態                :共同研究

利用課題名(日本語)    :グラフェン膜表面の殺ウイルス機能化

Program Title (English) :Virucidal effects of food derived materials on Graphene surface

利用者名(日本語)      :河原敏男

Username (English)     :T.Kawahara

所属名(日本語)        :中部大学生命健康科学部,

Affiliation (English)  :Chubu University, College of Life and Health Sciences

 

 

1.概要(Summary )

自然界に存在するウイルスには、細菌ウイルス、植物ウイルス及び動物ウイルスがある。動物ウイルスの一部は、ヒトに感染して人体に障害(ウイルス感染症)をもたらし、これらを病原性ウイルスと称する。人類は、ウイルス感染症を抑制する闘いを今も続けており、最近でも世界的に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染対策に多大な労力を費やしている。今後もウイルス感染症に対抗する手段の模索は続いていくと予想される。我々は、ウイルスの被害が軽微なもしくは無い世界を創成するために研究を続けている。

ウイルス感染症対策として、ワクチンや治療薬があるが、ウイルスの変異への対応の問題があり、これらは不十分だと思われる。そこで、食用藻類の機能解明を通して第三の対策として生体が本来有する感染防御力の維持・増強を目指してきた。その過程で、藻類に含有される硫酸化多糖体が活性成分の一種であること、さらに生体における感染防御能の増強を介してウイルス感染症抑制をもたらすことを明らかにしてきた。さらに、殺ウイルス機能も併せ持つ材料が存在することもわかった。

その中で、ウイルスを減らすために、食品由来材料の殺ウイルスを活用すれば、安全で長期使用が期待できるウイルス対策が可能となると思われる。そこで、その担持方法の研究を行うこととし、ウイルスの少ない空間創成のための薄膜表面の機能化を目指すことにした。

今回は、食用藻類の一種であるアカモク(Sargassum horneri)を材料として用いた。アカモクは、北海道の東海岸を除く日本全国の浅瀬に自生するホンダワラ科の大型海藻であり、資源量は豊富であるにもかかわらず十分に利用されているとは言い難い一方、これまでに殺ウイルス活性の報告がなされている。そこで、耐性ウイルス出現に結び付くことのない殺ウイルス活性(ウイルス不活化作用)をアカモクに求めて、その機能を評価し、各種基板表面上での機能評価を行った。

本課題では、グラフェン・カーボンナノチューブ合成装置を用いて、グラフェンを銅板上に作製してもらった。その膜に機能付与した材料開発をすすめることを目的としている。そして、食品由来の安全性の高い材料をグラフェン等の超薄膜材料に担持した機能材料開発をめざし、作製されたグラフェン上に担持した殺ウイルス材料の殺ウイルス活性、安定性等を評価する。

 

2.実験(Experimental)

グラフェン・カーボンナノチューブ合成装置を用いて、グラフェンを銅板上に作製した。単層グラフェンと多層グラフェンを作製し、アカモクエキスを表面に担持した。この表面にA型インフルエンザウイルス(NWS/33、H1N1亜型)を滴下し、30分後のウイルス量を評価した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

単層、多層両方のグラフェン薄膜でアカモクエキスによる表面機能化により、ウイルス量を3%程度に減らすことが出来ることが分かった。一方、アカモクエキスを担持した後、洗浄を行わなかった場合の殺ウイルス活性に比べて1/10以下の機能化にとどまっているため、今後担持性能を向上させることで、さらに機能が増大できると考えられる。

 

4.その他・特記事項(Others)

対応者:種村眞幸教授

 

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし。

 

6.関連特許(Patent)

なし。

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