利用報告書
課題番号 :S-19-NR-0035
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ケルセチン配糖体からなるナノキャリアの開発
Program Title (English) :Studies on Development of Nano-carrier Comprising Quercetin Glycosides
利用者名(日本語) :小山靖人
Username (English) :Y. Koyama
所属名(日本語) :富山県立大学工学部医薬品工学科
Affiliation (English) :Department of Pharmaceutical Engineering, Faculty of Engineering,
Toyama Prefetural University
1.概要(Summary )
ケルセチン配糖体は果物や野菜に豊富に含まれる生理活性物質である。ケルセチン配糖体は疎水性コアの両末端に2つの親水性部位を持つ両親媒性分子:ボラ型両親媒性分子と見なすことができる(Chem. Rev. 2004, 104, 2901-2937.)。ボラ型両親媒性分子は一般的な両親媒性分子に比べて親水性が高く, 自己組織構造を形成しやすいことが知られている。当研究室では, こうした天然配糖体に自己組織化という性質を付与し, 新物質として活用することに興味を持ち, 研究を推進している。最近我々は, アグリコンであるケルセチン, 単糖配糖体であるイソケルシトリン, およびオリゴ糖を配糖した分子のミセル化挙動を動的光散乱, 臨界ミセル濃度測定, 及びNMRのDOSY測定によって解析・比較し, ミセルの熱やpH変化に対する安定性が糖鎖長に応じて顕著に増加することを明らかとしている。今回, ケルセチン多糖配糖体からなる自己組織化体の形状を評価すべく, 協同研究としてTEM測定を実施したので結果を述べる。
2.実験(Experimental)
ケルセチンの3位に平均重合度9.2の1,2-グルコピラナンを配糖した化合物を文献の手法に沿って合成した(M. Nargis, A. B. Ihsan, Y. Koyama, RSC Adv. 2019, 9, 33674.)。染色剤としては2.0 w/v%のりんタングステン酸水溶液 (4.0 M NaOH水溶液でpH 7.0に調製)を用いた。またTEMグリッドとしては, 支持膜付Cuグリッド(JEOL社製、製品番号:1606, 200メッシュ)を使用した。臨界ミセル濃度以上に調製したケルセチン多糖配糖体の純水溶液2.0 Lを親水化処理した支持膜付Cuグリッド上にマイクロピペットを用いて滴下した。溶液とグリッドを1分間接触させた後, 余分な水分をろ紙で吸い取った。次いで, 上述の染色剤の水溶液を2.0 Lマイクロピペットを用いて滴下し, 1分間接触させ, 余分な水分を同様にろ紙で取り除いた。その後, 室温で乾燥して観察用試料を得, JEOL製JEM-3100FEF(TEM)を用いて20 Cで明視野を観察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ケルセチン多糖配糖体が水中で形成する自己組織化体のモルフォロジーをTEMで直接観測した結果, ボラ型両親媒性分子に特徴的なリボン状のミセルとその2次会合体に相当する像が得られた。また観測された組織のサイズは動的光散乱で得られた流体力学半径の結果とも良い一致を示した。以上の結果はこれまでの実験・測定の妥当性を裏付ける重要な証拠であると考えている。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本測定はNAISTの技術職員の藤原正裕氏, 及び技術補佐員の大野智子氏に御担当いただきました。また科学研究費補助金(JP17H03070)の支援によって実施したものです。この場を借りて, 深く感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) M. Nargis, A. B. Ihsan, Y. Koyama, International Conference on Recent Advances in Chemistry (ICRAC), 令和2年2月8日.
(2) M. Nargis, A. B. Ihsan, Y. Koyama, 日本化学会第100春季年会, 令和2年3月22日.
6.関連特許(Patent)
なし







