利用報告書

コプレーナ導波路を利用した強磁性共鳴検出の試み
黒川 雄一郎
豊田工業大学 情報記録機能材料研究室

課題番号 :S-16-NI-28
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :コプレーナ導波路を利用した強磁性共鳴検出の試み
Program Title (English) :Measurement of ferromagnetic resonance using coplanar waveguide
利用者名(日本語) :黒川 雄一郎
Username (English) :Y. Kurokawa
所属名(日本語) :豊田工業大学 情報記録機能材料研究室
Affiliation (English) :Information storage material laboratory, Toyota Technological institute.

1.概要(Summary )
スピン軌道相互作用の大きい元素内に電流を流すと、それに直交する向きのスピン流が発生する。これはスピンホール効果と呼ばれていて、スピントロニクスにおける重要な研究テーマである。最近の研究で、磁性体と大きなスピンホール効果を発生させる膜を積層すると、電流を流した場合に、大きなスピン流が磁性体に流れ込み、磁化の向きを制御することが可能になることが報告されている。この磁化の向きを制御するトルクはスピン軌道トルクと呼ばれている。このような、電流によって磁化を制御する技術は磁気メモリなどに応用が可能であり、注目を集めている。また、最近、磁性体とスピンホール効果の大きい膜を積層させた構造を持つ物質に交流電流を印加することで強磁性共鳴を励起することが可能であることが報告されている。さらに、その結果からスピン軌道トルクの大きさを見積もることができることが示されている。この研究では、スピン軌道トルクの大きさを見積もることに先駆けて、コプレーナ導波路を作製し、強磁性共鳴を観測することを試みている。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
高感度SQUID磁化測定装置
【実験方法】
まず、利用者が所属する研究室の電子ビームリソグラフィー装置を用いて、細線パターンを作製し、スパッタリング装置を用いて磁性膜を堆積し、リフトオフ法を用いて細線形状を得た。次に、重ね描画を行い、コプレーナ導波路を描画し、スパッタリングにて導波路を堆積した。SQUID磁化測定装置は試料の磁化測定に用いた。最後に、高周波プローバを用いて~7GHzまで交流電圧を印加した。強磁性共鳴は高周波電圧をかけている試料の直流電圧成分を見ることによって観測する。

3.結果と考察(Results and Discussion)

Fig. 1(a)にSQUIDで測定したPt/Tb/Co磁性膜の結果を示す。測定は面内方向に磁場を印加することで行っているので、作製した膜は面内方向に異方性を持っていることがわかる。またFig. 1(b)にPt/Co多層膜に7GHzの高周波電圧を印加した場合の直流電圧成分の面内磁場依存性を示す。結果から、150Oe付近にピークが確認でき、強磁性共鳴が発生していることが示された。
今後はTb 層を導入していった場合にスピン軌道トルクがどのように変化するかを強磁性共鳴の結果から導く予定である。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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