利用報告書

シクロデキストリン系MOF中の重合
道田 航、草壁 克己
崇城大学工学部ナノサイエンス学科

課題番号 :S-16-KU-0043(NPQ16020)
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :シクロデキストリン系MOF中の重合
Program Title (English) :Polymerization in cyclodextrin-based metal-organic framework (CD-MOF)
利用者名(日本語) :道田 航、草壁 克己
Username (English) :W. Michida、 K. Kusakabe
所属名(日本語) :崇城大学工学部ナノサイエンス学科
Affiliation (English) :Department of Nanoscience, Sojo University

1.概要(Summary )
γ-シクロデキストリンとKOHで形成される新規多孔質結晶(CD-MOF)は広い比表面積を持ち、生体適合性に優れているために触媒、吸着材、薬剤キャリアなどへの応用が期待される。さらにCD-MOFは結晶性に優れており、結晶欠陥やマクロ孔の生成が少なく、また条件によってはmmサイズの結晶となる。本研究ではこれらの性質を生かすために、結晶内で導電性ポリマーの原料であるEDOTの重合を行い、重合度あるいは結晶内の配置について調査を行った。CD-MOF内にEDOTの重合物であるPEDOTが生成したかを直接確認するためにナノ孔内で重合したPEDOTを含むCD-MOFを直接、質量分析するためにMALDI-TOF質量分析計を使用した。

2.実験(Experimental)
メタノールの蒸気拡散結晶析出法で合成したCD-MOFをEDOT液に浸漬した後、塩化第2鉄を酸化剤として重合を行った。合成したPEDOT/CD-MOFにマトリックスとしてテルチオフェンを加え、MALDI-TOF-MS(Bruker社製、Autoflex III)を用いて質量分析を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1はCD-MOF結晶内の細孔の模式図を示す。γ-シクロデキストリン(γ-CD)は空洞内部が疎水性なので、2個のγ-CDが組み合わさって図1に示す疎水性のナノ孔(サイズ約1 nm)を形成する。このγ-CDが6個組み合わさって親水的なナノ細孔を形成する。これら6個のγ-CDからなるユニットが体心立法構造をとることで、最終的には矩形の結晶が生成する。
メタノールに溶解するEDOTは親水性なので、親水性のナノ孔に集積し、その場で重合が起こる。したがって、この結晶は疎水性と親水性のナノ孔が交互に配列した両親媒性ナノ孔材料となる。そのため、重合は限られた空間でおこなわれるため、じゅうごうどの制御が可能である。
EDOTの分析から、親水性ナノ細孔には平均6個のEDOTが存在し、MALDI-TOF-MSの結果から、これを重合することで最大で5個のEDOTが重合したオリゴマーが生成したことが明らかになった。

図1 CD-MOF結晶内の細孔構造の模式図
4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) W. Michida, A. Nagai, M. Sakuragi, K. Kusakabe, 253rd ACS National Meeting & Exposition, 平成29年4月2日-6日(発表予定)

6.関連特許(Patent)
なし。

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