利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1072
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :シッフ塩基金属錯体と種々の複合系の円偏光紫外光誘起分子配向
Program Title (English) :Circularly polarized light induced molecular orientation of hybrid materials of Schiff base metal complexes
利用者名(日本語) :須永将光, 高瀬雅浩, 森脇良司, 中鳥博幸, 秋津貴城
Username (English) :N. Sunaga, M. Takase, R. Moriwaki, H. Nakajima, T. Akitsu
所属名(日本語) :東京理科大学大学院総合化学研究科/理学部第二部化学科
Affiliation (English) :Department of Chemistry, Tokyo University of Science
1.概要(Summary )
種々の置換基を有するシッフ塩基金属錯体とアゾベンゼンを別々に含むメタクリル酸メチルポリマー(PMMA)キャスト膜の有機-無機複合材料を創製し、直線偏光紫外光照射後の光学的異方性の増大を偏光電子スペクトルや偏光IRスペクトルで観測してきた。これはワイゲルト効果によりアゾベンゼンの光学的二色性の増大を保持でき、なおかつ直接偏光紫外光の影響を受けないキラルシッフ塩基錯体にまで超分子的に分子配向の効果が伝播できる、PMMAマトリックスの特性による。この結果アゾベンゼン誘導体ではPMMA膜中で、直線偏光紫外光の効果より微弱であるが、円偏光紫外光を照射すると、前後でCDスペクトルに変化が現れることが明らかになった。本年度は、配位子にアゾベンゼン基を含む複核錯体を対象とした。円偏光UV照射による分子配向制御(超分子らせんキラリティーの発現)に、効率のよい波長があることを確かめる。
2.実験(Experimental)
UVSOR BL-1Uを用いた波長選択的高輝度UV円偏光照射を行い、分子配向を誘起した後それぞれのCDスペクトルを比較して、円偏光照射時の超分子キラリティーの明確な実証を目的とした。円偏光UV光照射直後のCDスペクトル(JASCO J-720WI。220-800nm程度。室温測定)の変化により、期待される分子配列が形成されるか検討した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Ni(II),Cu(II),Zn(II)複核錯体を含むPMMAキャスト膜試料、計3種類を作製して、BL-1U(アンジュレータ使用)での円偏光UV光照射直後のCDスペクトルの変化により、分子配列を調べた。280 nm、318 nm及び380 nmに波長を合わせて、3分、5分及び8分間、照射した。前後のCDスペクトルの比較では、ブランク・データを差し引き、照射後CDから照射前CDを差し引いた差スペクトルを求めると、いずれの錯体も280 nm付近にキラル秩序分子配向の誘起を示唆する顕著なCDスペクトルの増大を示した。さらに、380, 280 nm照射では全錯体で誘起CDが発現した。しかし、318 nm照射ではCu(II)錯体のみ誘起CDが発現した。このように、錯体によって分子配向の誘起に適する円偏光波長が存在することが明らかになった。
一般に、溶液中のような等方的な環境では、キラル錯体の場合に正常なCDスペクトルが得られるが、これは分子内のキラリティーに起因する。一方、アキラル錯体の場合には、CDスペクトルが観測されない。ところが、結晶中や配向膜中などの異方的な環境では正常なCDスペクトル以外にアーティファクトピークが観測されることが知られている。そこで、CD差スペクトルを議論すれば、アーティファクトピークが残らず、キラリティーに影響する変化だけを検出することが可能である。したがって、CDの発現は円偏光UV照射による分子間の超分子らせん配向によるものと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
JSPS 日印特別講演ツアープログラム(予備交流)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)高瀬雅浩,秋津貴城, 13th Conference of Asian Crystallographic Association (AsCA)-2015, 平成27年12月7日
(2)高野博,須永将光,高瀬雅浩,秋津貴城, 第5回CSJ化学
フェスタ, 平成27年10月13日
(3)秋津貴城, 4th World Congress of Advanced Materials
2015, 平成27年5月27日
(4)秋津貴城,山崎敦夫,須永将光,高倉和也,津田恵梨香, 4th World Congress of Advanced Materials 2015, 平成27年5月27日
6.関連特許(Patent)
なし。







