利用報告書

シリコントランジスタチャネルへの化学修飾
信澤和行
大阪大学大学院工学研究科

課題番号 :S-15-NR-0028
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :シリコントランジスタチャネルへの化学修飾
Program Title (English) :Chemical modification onto silicon transistor channel
利用者名(日本語) :信澤和行
Username (English) :Kazuyuki Nobusawa
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering,Osaka University

1.概要(Summary )
 電気応答を基本とするバイオ分子検出においては、チャネル表面数nmで生体応答を構築することが必要であり、バイオ分子固定化基板の作製は、エラー抑制、定量評価信頼性向上等に関わる重要な技術である。汎用的には、無機材質に対する結合能とバイオ分子との反応性を有する2活性基を提示するシラン剤による単分子膜形成がバイオ分子固定化界面になる。この手法において、本研究では、活性基の修飾密度、膜安定性、表面モルフォロジー等を評価し、バイオ分子固定化のための基礎的知見を得ることを目的とした。実施内容は、バイオ分子固定化基板としてSiO2層を有するシリコン基板上にシランカップリング剤のSAM膜形成し、表面に提示された反応基を介した機能性基修飾を評価するため、主にXPSによる表面解析を実施した。

2.実験(Experimental)
 複数種のシランカップリング剤を用いて、SiO2基板に対する修飾条件の検討を行った。UV-Ozone照射により基板を活性化した後、気相法、液相法によりシラン剤の単分子膜形成を促した。基板への物理吸着分を溶剤洗浄および超音波洗浄によりを除去し、ガスフローにより乾燥させた。単分子膜の化学組成を評価するため、XPSによる化学状態解析を実施した。また必要に応じて、エリプソメトリーおよびAFMにより表面計測を実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 シラン剤修飾反応における溶媒依存性をトルエン、エタノール、水を反応溶媒として評価した結果、それぞれ、シラン剤に由来する化学結合状態を解析可能であった。ここで、トルエンを反応溶媒とした場合、XPSシグナル強度の違いから、分子修飾率が最も良好であ
ると判断した。XPSによる解析結果の相関性は、基板表面濡れ性試験とよい一致を示した。エリプソメトリー測定による膜厚は1nm以下であり、シラン剤の分子長を考慮すると、単分子層の形成が示唆された。次に反応時間依存性を評価し、その最適化までを行うことができた。
 続いて、バイオ分子固定化において活性基の反応性を検討するため、モデル化合物の単分子膜への修飾を行った。バイオ分子固定化に汎用的に利用されるアミノ基、カルボキシル基等をもつ反応基をバイオ分子のモデル化合物として用いた。モデル分子にはフッ素化合物が含まれており、F1sシグナルを検出することで修飾の可否を同定した。その結果、モデル化合物の存在をXPSにより解析することができた。

4.その他・特記事項(Others)
 本研究の一部は独立行政法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プロブラム」の支援によって行われた。XPS測定およびエリプソメトリー測定に際し技術指導を頂いた奈良先端科学技術大学院大学 岡島技術職員、宮家技術職員に感謝申し上げる。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) N. Sabani, K. Nobusawa, I. Yamashita, R. K. Verma and K. Nakatani, Asian Joint Symposium on Nanobiotechnology(Special Symposium on the 76th JSAP Autumn Meeting), Nagoya Congress Center, Nagoya, Japan, 2015. 9. 13.

6.関連特許(Patent)
なし

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