利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1031b
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :スパッタ法により形成された単結晶イットリウム鉄ガーネット膜の特性評価
Program Title (English) :Study on damping constant of yttrium iron garnet deposited by sputtering
利用者名(日本語) :後藤太一1,2)
Username (English) :Taichi Goto1,2)
所属名(日本語) :1) 豊橋技術科学大学, 2) JST さきがけ
Affiliation (English) :1) Toyohashi University of Technology 2) PRESTO, JST
1.概要(Summary )
ガーネット構造をもつフェリ磁性を示すイットリウムと鉄の酸化物であるイットリウム鉄ガーネット(Yttrium iron garnet, YIG)は,強磁性共鳴(Ferromagnetic resonance)のQ値が高く,スピン波のダンピング定数が低い特徴がある。このことから,YIGはギガヘルツからテラヘルツまでの周波数帯で動作するデバイスに広く用いられる。これまで,YIGはLiquid Phase Epitaxial(LPE)法によって形成される場合がほとんどであった。これはいわゆる引き上げ法であり,膜厚の制御性が低く,数マイクロメートル以下の高品質なYIGを作る手段は無かった。そこで,本研究では,広く使用されており,技術が確立されている高周波スパッタ法を用いて数百から数十ナノメートルの膜厚をもち低いダンピング定数をもつYIGを形成することを目的とした。
2.実験(Experimental)
試料は申請者の所属機関が保有する装置で形成した。試料は高周波マグネトロンスパッタ法を用いて,ガーネット基板上に,YIGを形成した。形成条件を変化させ,X線回折装置によって,結晶化していることが分かった。これらYIGの品質は,ESRと,SQUIDによって測定した。ESRは,Bruker E500を用いた。
静的な磁化特性を明らかにする目的で,SQUIDを用いる。これまでに予備実験として,申請者所属機関保有のVSMを用いた磁化特性の評価を試みたが,極薄膜であるため,磁化総量が小さく測定感度が不十分であったため,SQUIDの高感度測定が必要であると考えた。測定は基本的に,室温で行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ESR(電子スピン共鳴装置 Bruker E500)によって,形成したYIGの強磁性共鳴の大きさを評価した。評価したサンプルの多くが,⊿Hと成膜条件の関係が明らかになり,VSMの簡易的な実験でも,⊿Hの大小が予測できるようになった。ある程度,良質な膜が得られてから,⊿Hを測定に,分子研に測定に行くという研究体制を確立できた。
SQUIDを用いたYIG膜の面直方向の測定は,感度に関係なく測定が困難であることが分かった。
今後は,成膜手法を変化し,より高性能な膜を形成するとともに,これまでに得られた結果を元にした,デバイス作成に発展するため,膜の⊿H評価は継続する予定である。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は,日本学術振興会 科学研究費助成事業,No. 26706009,No. 26600043,No. 26220902,No. 15H02240,国立研究会開発法人 科学技術振興機構 JST さきがけの補助を受けた。ここに感謝を示す。装置の使用法に関し,指導賜った藤原基靖氏に感謝する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Taichi Goto, Naoki Kanazawa, Altansargai Buyandalai, Hiroyuki Takagi, Yuichi Nakamura, Shingo Okajima, Takashi Hasegawa, Alexander B. Granovsky, Koji Sekiguchi, Caroline A. Ross and Mitsuteru Inoue, “Spin wave differential circuit for realization of thermally stable magnonic sensors”, Appl. Phys. Lett., 106, 13, 132412 (2015/04/03).
6.関連特許(Patent)
公開可能なものは無







