利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0077
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :チャノミドリヒメヨコバイの吸汁痕の観察
Program Title (English) :Observation of the shapes of puncture holes produced by tea green leafhopper
利用者名(日本語) :萬屋 宏
Username (English) :YOROZUYA Hiroshi
所属名(日本語) :農研機構 果樹茶業研究部門
Affiliation (English) :Institute of Fruit Tree and Tea Science, NARO
1.概要(Summary)
チャノミドリヒメヨコバイは、日本の重要な農産物である茶の新芽を吸汁加害することにより収量と品質に悪影響をおよぼす難防除害虫である。農研機構は、本虫に対して抵抗性を持つチャ品種育成に向けた研究を行っている。本虫に対して抗寄生性や耐性などの抵抗性を持つチャ系統があることを発見し、その抵抗性メカニズムに関する研究をすすめている。抵抗性チャ系統と「やぶきた」などの感受性品種とで本虫の吸汁痕の形状などに違いがないか調査する必要がある。そこで本事業を利用してナノスーツ法を用いた吸汁痕の形状の観察と比較を行う。
2.実験(Experimental)
本実験では、感受性品種として「やぶきた」を、抵抗性チャ系統としてCd19とCd289を供試し、葉裏に残されたチャノミドリヒメヨコバイの吸汁痕をナノスーツ法を用いて観察した。観察には、FE-SEM(日本電子製JSM-7800F)を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
感受性品種「やぶきた」の第一位葉の葉裏に残された吸汁痕は、口針を抜いた後にできる大きな穴とその穴の周辺に輪状の明瞭な口針鞘が形成されていた(図1)。その一方、抵抗性チャ系統の第一位葉の葉裏に残された吸汁痕は、口針を抜いた後にできる穴が小さく、明瞭な口針鞘が形成されていない状態が観察できた(図2、図3)。過去のEPGシステムを用いた吸汁行動の解析から、抵抗性チャ系統上では、継続的な吸汁(特に師管液の吸汁)が阻害されていることがわかっている。感受性品種上と抵抗性系統上の吸汁行動の違いが今回、観察できた吸汁痕の形状の違いに反映された可能性がある。また、抵抗性系統上では、明瞭な口針鞘が見られないことから、吸汁行動に欠かせない口針鞘を形成する唾液の分泌を抑制している可能性がある。これが抵抗性の至近要因とも考えられ、今後も調査を行いたい。
図1 感受性品種「やぶきた」における吸汁痕
図2 抵抗性チャ系統Cd19における吸汁痕
図3 抵抗性チャ系統Cd289における吸汁痕
4.その他・特記事項(Others)
・謝辞
本研究では、千歳科学技術大学の平井悠司先生にナノスーツ法のご説明を頂いたほか、ポリマー液の塗布などサンプル調整法やFE-SEMによる電子顕微鏡観察法についてご指導を頂きました。この場をお借りし感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)







