利用報告書
課題番号 :S-15-KU-0025(NPS15026)
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :テトラフェニルボレートを含む新規発光性イオン結晶の開発
Program Title (English) :Development of novel luminescent ionic crystals
利用者名(日本語) :大川原 徹
Username (English) :T. Okawara
所属名(日本語) :北九州工業高等専門学校
Affiliation (English) :National Institute of Technology, Kitakyushu College
1.概要(Summary )
イオン対を作ることで発光を示すイオン結晶は、陽イオンと陰イオンの組み合わせによって無数のバリエーションを作ることが出来、幅広い分野での応用が期待される有機発光材料として高い可能性を秘めている。本研究では、テトラフェニルボレートを種々の陽イオン性金属錯体と組み合わせることで重金属イオンとテトラフェニルボレートが接近することによる重原子効果の発現による発光材料の開発を目指し、三次元構造の評価のため、単結晶X線構造解析を行う。
2.実験(Experimental)
1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(以下、サイクラムと略)と硫酸ニッケル(II)または硫酸銅(II)を水中で反応させることで、Ni(II)サイクラム錯体およびCu(II)(サイクラム)錯体を得た。その後、テトラフェニルホウ酸(以下、TPBと略)ナトリウム、またはテトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸(以下、TPBClと略)カリウムを加えることでイオン交換反応を行い、対応する塩を合成した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Ni(サイクラム)錯体TPBCl塩はカチオンに対してアニオンが非常に大きいため、結晶中に大きな空隙を有し、その空隙に種々の揮発性有機化合物、アセトンやアセトニトリルなどを取り込むことが単結晶X線構造解析によって明らかになった。また、Cu(サイクラム)錯体では、Niと比較して中心金属に対する配位子のz軸方向からの配位力が強いため、容易に6 配位構造の錯体が得られることが明らかになった。特に、アセトンが共存する場合、Cuに対してアセトンが2分子配位した、6 配位錯体が単離された。Cu(サイクラム)錯体は癌の放射線診断の一種であるPET(Positron Emission Tomography: 陽電子放射断層撮影)法におけるトレーサーとして近年盛んに研究されており、その生体内での挙動に注目が集まる一方、糖のような配位部位を持たない生体分子との相互作用については報告例がないのが現状である。今回、我々は、単結晶X線構造解析装置を用いて図1に示すように、アセトンというカルボニル基を有し、糖に共通する構造を有する小分子とCu(サイクラム)錯体とが実際に配位結合を通じて相互作用することを証明した。
図1. Cu(サイクラム)錯体とアセトンの相互作用
4.その他・特記事項(Others)
該当なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Chihiro Matsui, Toru Okawara, Toshihiko Nagamura, Kenji Takehara, X-ray Structure Analysis Online, 2015, 31, 53-54.
(2) 山本竜太郎 他、日本化学会第96春季年会、平成28年3月24日(口頭A講演、講演番号:1E1-39)
6.関連特許(Patent)
該当なし







