利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1037
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :トポロジカル半金属候補材料マグネシウムタンタル窒化物薄膜の作製と物性評価
Program Title (English) :Growth and characterization of topological semimetal candidate Magnesium Tantalum nitride thin films
利用者名(日本語) :川口昂彦1)
Username (English) :Takahiko Kawaguchi1)
所属名(日本語) :1) 静岡大学学術院工学領域
Affiliation (English) :1) Faculty of Engineering, Shizuoka University
1.概要(Summary )
あたかも質量ゼロとして振舞う電子を持つ「トポロジカル半金属」が大きな期待を集めており、超高速演算素子の実現やスピントロニクス応用などが期待されている。本研究では、ごく最近トポロジカル半金属となることが理論的に提唱された、六方晶MgTa2N3に注目した。これまでに報告されているトポロジカル物質の多くは、毒性元素を含むか、大気中で不安定な化合物である。これらに対し、MgTa2N3は毒性元素を含まず、化学的にも安定であるため、基礎・応用の両面で魅力的な材料である。しかし、MgTa2N3は1992年に合成の報告がなされているものの、物性測定の報告は無い。そこで本研究では、本物質のエピタキシャル薄膜を作製し、その物性評価を行うことを目的とした。利用者が独自に開発した磁場印加PLD法を用いて薄膜作製に取り組んだ結果、六方晶MgTa2N3相の形成がわずかながら見られた。しかし、主相は立方晶の(Mg,Ta)Nであり、目的とした六方晶MgTa2N3の単相薄膜は得るには至らなかった。
2.実験(Experimental)
磁場印加PLD法を用いてMgTa2N3薄膜をサファイア(0001)基板上に作製した。ターゲットには、Mg単体とTa3N5の混合粉末を放電プラズマ焼結法により焼結することで作製した焼結体を用いた。得られた薄膜はX線回折(XRD)および電子線マイクロアナライザを用いて評価した。なお、極低温での電気抵抗やホール抵抗は極低温施設にあるMPMS-XL7の抵抗測定オプションを用いて測定する予定であったが、単相薄膜が得られなかったため、測定にまで及ばなかった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に成膜温度600℃にて各磁場下で成膜した薄膜のXRDパターンを示す。いずれの磁場でも、主相は岩塩型立方晶相である(Mg,Ta)N相であることがわかった。一方、1500 G以上において2θ=34°付近に小さなピークが見られた。これは目的となる六方晶MgTa2N3相に対応すると考えられる。高磁場下では、レーザー励起された原料プラズマを安定化することで、高エネルギー状態の原料が薄膜に供給される。この効果により高磁場下で、準安定相である六方晶相が形成したと考えられる。なお、38°付近にみられるピークは酸化物由来と考えられる。これは真空チャンバの残留酸素に起因していると考えられるが、2000 Gでは酸化物の形成が抑制されている。これは磁場印加により成膜レートが上がり、単位膜厚あたりに取り込まれる残留酸素量が減少した結果だと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







