利用報告書

トランスサイレチンの立体構造解析
水口 峰之
富山大学薬学部

課題番号 :S-19-CT-0104
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :トランスサイレチンの立体構造解析
ProgramTitle(English) :Structural analysis of transthyretin
利用者名(日本語) :水口 峰之
Username(English) :M. Mizuguchi
所属名(日本語) :富山大学薬学部
Affiliation (English) :Faculty of Pharmaceutical Sciences, University of Toyama

1.概要(Summary )
 トランスサイレチン(TTR)は、血漿や脳脊髄液に存在するホモ四量体タンパク質である。TTRはアミロイド線維となって様々な臓器に蓄積しATTRアミロイドーシスを引き起こす。TTRの四量体は、単量体へと解離し、アミロイド中間体を経てアミロイド線維になる。
 TTRはアミノ酸変異によって不安定化する場合が多く、遺伝性ATTRアミロイドーシスにおいてはアミノ酸変異による不安定化がアミロイド線維化の原因である。一方で、野生型TTRのアミロイド線維が心臓などに蓄積する野生型ATTRアミロイドーシスもあることから、変異以外にもTTRを不安定化する要因があると予想される。その一つは化学修飾による不安定化であり、TTRのCys10がS-システイニル化されると四量体の解離速度が2倍になると報告されている1)。一方で、Cys10のS-スルホン化は四量体を安定化することも知られており、化学修飾とTTRの不安定化の関係については未だ明らかにされていない。また、TTRの断片化がATTRアミロイドーシスの発症に関与している可能性もある。野生型およびV30M型ATTRアミロイドーシスでは、10 kDaのフラグメント(TTRの49-127残基)や5 kDaのフラグメント(TTRの81-127残基)からなるアミロイド線維が心臓に蓄積する場合がある2)。本研究では、ラマンスペクトルを用いて、TTRのアミロイド線維中のCys10の化学修飾や、断片化TTRの二次構造について調べる。

2.実験(Experimental)
 ラマンスペクトルの測定は、ラマンイメージング装置(レニショー社製 inVia)を用いて行った。サンプルはリゾチームとシスチンの結晶を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 シスチンとリゾチームの結晶を用いて測定条件を探索した。両方の測定において、532 nmでレーザー強度0.5%、40秒間の測定で得たラマンスペクトルが文献の情報と一致した。一方で、325 nmでレーザー強度5%、40秒の測定では1500 cm-1辺りに大きな信号が観測され、これは試料がレーザーにより発火したためと考えられた。今後はTTRのアミロイド線維について、ラマンスペクトルによる解析を進めていきたい。

4.その他・特記事項(Others)
<参考文献>
1) Kingsbury JS, Laue TM, Klimtchuk ES, Théberge R, Costello CE, Connors LH. J Biol Chem. 2008, 283, 11887-11896.
2) Ueda M, Okada M, Mizuguchi M, Kluve-Beckerman B, Kanenawa K, Isoguchi A, Misumi Y, Tasaki M, Ueda A, Kanai A, Sasaki R, Masuda T, Inoue Y, Nomura T, Shinriki S, Shuto T, Kai H, Yamashita T, Matsui H, Benson MD, Ando Y. J Biol Chem. 2019, 294, 11259-11275.
<謝辞>
 本研究での測定・解析に関して、公立千歳科学技術大学の河野敬一シニアアドバイザーにお世話になりました。心より御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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