利用報告書

トランスサイレチンの立体構造解析
水口峰之(富山大学薬学部)

課題番号 :S-20-CT-0104
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :トランスサイレチンの立体構造解析
ProgramTitle(English) :Structural analysis of transthyretin
利用者名(日本語) :水口 峰之
Username(English) :M. Mizuguchi
所属名(日本語) :富山大学薬学部
Affiliation (English) :Faculty of Pharmaceutical Sciences, University of Toyama

1.概要(Summary )
 トランスサイレチン(Transthyretin; TTR)は分子量56 kDaのホモ四量体タンパク質であり、四量体の解離と単量体の部分的な変性を経て、アミロイド線維となって凝集する(Johnson et al., 2012)。TTRのアミロイド線維はATTRアミロイドーシスの原因であり、遺伝性のアミノ酸変異によってTTRが不安定化すると、アミロイド線維が形成され特定の臓器に蓄積する。ATTRアミロイドーシスの原因となるアミノ酸変異は、これまでに130種類以上発見されているが、それぞれのアミロイド線維が同じ構造をしているのか、それともアミノ酸変異によってアミロイド線維の構造が異なるのかは不明なままである。また、TTR変異体は、その変異によってアミロイド線維が蓄積する臓器や症状が異なる。そこで本研究では、さまざまな変異型TTRのアミロイド線維に対してラマンスペクトルを測定し、アミロイド線維の構造について二次構造等の情報を得る。これにより、変異によってTTRのアミロイド線維の構造が異なるのかを調べ、蓄積する部位や症状との関係について考察する。

2.実験(Experimental)
V30M変異型TTRのアミロイド線維は、100 mM acetic acid, 0.5 mM EDTA, pH 4.4の存在下で、0.2 mg/mLのV30M-TTRを37℃で7日間インキュベーションすることで得た。その後、遠心分離を繰り返してアミロイド線維を集め、さらにpH 4.4の100 mM KClで溶液を置換した。得られたアミロイド線維はゲル状であった。 ラマンスペクトルの測定は、ラマンイメージング装置(レニショー社製 inVia、公立千歳科学技術大学登録装置)を用いて行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 アミロイド線維を含むゲル状の試料を金蒸着したスライドグラス上に滴下し、ラマンスペクトル測定を行ったが、ラマン信号を観測することができなかった。ゲル状の試料に含まれるアミロイド線維の量が不足していたことが原因と推測されるので、試料の作成方法を検討する必要がある。また、ラマン測定の際にレーザーを照射することで試料が乾燥したので、今後は温度コントローラーを使用し、石英セルに封入して測定したい。

4.その他・特記事項(Others)
<参考文献>
Johnson SM, Connelly S, Fearns C, Powers ET, Kelly JW. The transthyretin amyloidoses: from delineating the molecular mechanism of aggregation linked to pathology to a regulatory-agency-approved drug. J Mol Biol. 2012, 421, 185–203.

<謝辞>
 本研究での測定・解析に関して、公立千歳科学技術大学の河野敬一シニアアドバイザーにお世話になりました。心より御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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