利用報告書

トリペプチド環状錯体を利用した各種ヘテロ環状金属イオン配列の磁気的相互作用の解明
菅沼瑛里, 三宅亮介(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)

課題番号 :S-20-MS-0020
利用形態 :ナノプラット協力研究
利用課題名(日本語) :トリペプチド環状錯体を利用した各種ヘテロ環状金属イオン配列の磁気的相互作用の解明
Program Title (English) :Study of magnetic interactions in cyclic heterometallic arrangement formed from cyclic complexes of a tripeptide.
利用者名(日本語) :菅沼瑛里, 三宅亮介
Username (English) :E. Suganuma, R. Miyake
所属名(日本語) :お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科
Affiliation (English) :Ochanomizu University

1.概要(Summary )
異種の金属イオンの配列制御は、異なる金属イオン間の相互作用を通じて新たな物性を創出する上で重要なアプローチである。ペプチドのアミノ酸配列の設計性の高さは、異種金属イオン配列制御に有効であるが、その報告例の多くは、直鎖状のものに限られていた。また、ペプチド骨格に共役部位をほとんど持たないため、金属イオン間に軌道を介した相互作用を導入する場合、金属中心の非配位サイトに直接的な結合もしくは、架橋配位子を介した結合を導入する必要があった。このため、平面4配位など、非配位サイトを持った金属中心に対する異種金属イオン間相互作用の創出を、ペプチドを用いて行った例はほとんどなかった。特に、環状配列では、我々が知る限り例がなかった。我々は、ペプチド主鎖と側鎖に配位構造の異なる結合サイトをデザインし、これらの結合サイトを配位部位としても共役部位としても使えるアミド基で繋げれば、効率的に環状の異種金属イオン配列の形成ができるのではないかと考えた。本研究では前述のデザインに基づき独自に開発したトリペプチド1を用いてCu(II)-Ni(II)の環状金属イオン配列を持つ環状配列([(1-3H+)4Cu4Ni4]4+)を形成することを明らかにした。この環状錯体は、4配位中心がCu(II)イオンに選択的に結合するため、Cu/Niの混合比が1からずれていても、選択的に目的の配列を持つ環状錯体の結晶が得られた。(本ナノプラット協力研究を利用して、)本錯体結晶の磁気的挙動についてSQUID測定により調べたところ、低温では、環状骨格全体で、S = 2の状態を示し、環状骨格内の金属中心に効率的な反強磁性相互作用が働くことを明らかにした。これらの結果は、論文などでナノプラット協力研究の成果として発表した(論文・学会発表1)。

2.実験(Experimental)
本課題での実験は行えず、主に、昨年度ナノプラットの課題で得たデータ整理とディスカッションのみを行なった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
昨年度からの課題の成果と合わせて、環状Cu(II)-Ni(II)配列の同定とその反強磁性的な相互作用を明らかにすることができた。

4.その他・特記事項(Others)
今年度は、東京都においてコロナ禍で緊急事態宣言がある期間や感染者が増加している期間は出張を伴う協力研究を見送った。コロナが落ちついた時期に、1度分子研に出張し、測定のデータ整理とディスカッションを行なった。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) R. Miyake, E. Suganuma, S. Kimura, H. Mori, J. Okabayashi, and T. Kusamoto, Angew. Chem. Int. Ed. 60, (2021)p.p.5179-5183.
(2) 菅沼瑛里, 木村舜, 森寛敏, 岡林潤, 草本哲郎, 三宅亮介, 第101回日本化学会春季年会(オンライン), 令和3年3月19日.

6.関連特許(Patent)
なし

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