利用報告書
課題番号 :S-17-MS-0039
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :トンネル構造をもつ新規プロトン導電体の合成
Program Title (English) :Synthesis of new proton conductors with tunnel structure
利用者名(日本語) :松田 泰明
Username (English) :Yasuaki Matsuda
所属名(日本語) :大阪工業大学工学部応用化学科
Affiliation (English) :Osaka Institute of Technology
1.概要(Summary )
不燃性でプロトンを多量に含む無機固体酸は、200°C付近の中温域で作動する新しい燃料電池の固体電解質として注目されている。この中でも、トンネル構造をもつRbMg1-xH2x(PO3)3・yH2Oは、室温から300ºCの広い温度域で10-3 S/cmの高いプロトン導電率を示す数少ない物質である[1]。この物質と同型の化合物群は、更なる高プロトン導電性を示す物質が存在する可能性があるものの、リン酸塩の結晶構造は体系化されていないため、物質探索が進んでいない。本研究は、この系よりも優れたプロトン導電特性を示すリン酸化合物の合成を目指し、Rbを他のアルカリ金属で置換することで物質探索し、カリウム置換系で200ºC付近で10-3 Scm-1を超えるプロトン導電率を示す新規プロトン導電体を見出した。
2.実験(Experimental)
試料合成は共沈法で行った。所定のモル比で秤量したアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩を0.5 mol/Lリン酸水溶液30 mLに溶解させたのち、大気中、120ºCで12 – 36 h乾燥した。得られた前駆体を大気中で250ºC, 12 – 18 h焼成し、目的物質を得た。得られた試料について粉末X線回折測定、交流インピーダンス法による導電率測定を行った。交流インピーダンス測定は、Arガス気流中で室温から250°C付近までプロトン導電率を測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に合成した新規プロトン導電体の粉末X線回折図形を示す。合成した全ての試料で、空間群R32で帰属される反射が観測され、RbMg1-xH2x(PO3)3・yH2Oと同型の化合物の生成が確認された。
図1. KMg1-xH2x(PO3)3・yH2OのX線回折図形.
x = 0のみ不純物相であるMgOの反射が観測された。格子定数は、a軸はx = 0から0.15にかけて収縮し、x = 0.15から0.20にかけて伸長した。c軸はx = 0から0.10にかけて収縮し、x = 0.10から0.20にかけて伸長した。この変化より、Mg欠損による過剰プロトンの導入に対応した組成の変化が起きたと考えられる。定比の組成の試料は、低いプロトン導電率を示したが、過剰プロトンの導入によりプロトン導電率は向上した。x = 0.20の試料は150ºCで10-3 Scm-1を超える高いプロトン導電率を示した。
4.その他・特記事項(Others)
「なし。」
5.論文・学会発表(Publication/Presentation))
「なし。」
6.関連特許(Patent)
「なし。」
参考文献
[1] Y. Matsuda, et al., J.Mater. Chem. A, 1, 15544 (2013).