利用報告書

ナノインプリント法を用いたZnOナノロッドの配列制御
西口紘二郎1), 本田光裕1) ,市川 洋1)
1) 名古屋工業大学大学院工学研究科

課題番号                :S-20-NI-0008

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :ナノインプリント法を用いたZnOナノロッドの配列制御

Program Title (English) :Alignment control of ZnO nano-rods by nanoimprint method

利用者名(日本語)      :西口紘二郎1), 本田光裕1)市川 洋1)

Username (English)     :K. Nishiguchi1), M. Honda1), Y. Ichikawa1)

所属名(日本語)        :1) 名古屋工業大学大学院工学研究科

Affiliation (English)  :1) Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology

Fig.1. ナノインプリント法を用いたZnOナノロッドの配列制御工程図.

 

1.概要(Summary )

センサー、高効率光触媒材料などへの応用を目指し、水熱合成法による配向性酸化亜鉛ナノロッド(ZnO-NR)の成長制御に関する研究を行ってきた。ZnO-NRは、基板にシード層として厚さ数10~200nmのZnO薄膜を堆積し、その結晶性、モフォロジーを制御することで、ZnO-NRの配向性、密度、太さ(アスペクト比)を制御できることがわかってきたが、光の干渉性を利用したり、MEMS/NEMS等に応用するためには、配向成長したZnO-NRの配列をパターニングした配列制御が望まれる。本研究では、ナノインプリント手法で、ZnO-NRの配列制御を試みた。

 

2.実験(Experimental)

ZnO-NRは、水熱合成法で作製した。配向性の高いZnO-NRを得るために、C面サファイア基板上に、厚み200nmの導電性ZnO薄膜をシード層として作製した。ZnO薄膜は、Alが2%ドープされた焼結ZnOターゲット(Φ100mm、t3mm)を0.1Paの反応性ガス雰囲気(Ar:O2=4:1)中で13.56MHzの高周波スパッタし成膜した。薄膜はN2雰囲気中で1000℃-1hアニールし、導電性のC軸配向性ZnO薄膜にした。10mm✕10mmの薄膜試料に対して、水熱合成法でZnO-NRを作製するが、今回はナノインプリント法で、ZnOシード層をマスキングし、マスクされていないZnO膜面からのZnO-NR成長を試みた。

Fig.1に、ナノインプリント法によるZnO-NRの配列制御の工程図を示す。工程(1)に“モールド”とあるが、これはナノインプリントを行うための“鋳型”であり、電子ビーム描画法でSi基板上に作製された外注品である。これは、マスターモールドと呼ばれるもので、以降の工程での劣化・破損を回避するため、まずはレプリカモールドを自作した。UV硬化樹脂PMMA(Poly methyl methacrylate)を基板上に塗布し、マスターモールドを押しつけ、紫外線(UV-A)を照射して硬化させ、できあがった凹凸面にPtを蒸着して、樹脂を取り除いてレプリカモールドを作製した。今回の実験では、モールドとして、高さ200nm、幅200nm、周期400nmのグレーティングを用いた。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

Fig.2にナノインプリント処理後の資料劈開断面図を示す。この場合、ZnO膜は付けず、石英基板上に直接グレーティング構造の作製を試みている。グレーティング構造は観て取れるが、400nm程度の残膜があり、所望の基板面が露わになっていないことがわかる。残膜の低減のため、LTIL(Liquid transfer imprint lithography)という方法で樹脂量の低減を試みた。これは、Fig.1の工程(7)を何回か繰り返す方法で、残膜の膜厚は3回で最小になることがわかった。さらに、工程(6)での加える圧力、均一性の向上を試み、膜厚数10nmまで改善するこ

Fig.2. ナノインプリント処理後のZnO残薄.

とができた。最終的に、Arプラズマエッチングでほぼ残膜を取り除くことができた。

Fig.3. ナノインプリント法でグレーティング構造に配列成長させたZnO-NRのSEM観察像:(上)400倍,(下)6000倍画像.

ナノインプリント処理で形成されたグレーティング構造にZnO-NRを水熱合成で作製した試料の表面SEM観察像をFig.3に示す。グレーティング状にZnO-NRが成長していることがわかる。しかし、このような表面状態になっているのは基板の一部であり、パターン化されていない場所も多かった。この原因は、ナノインプリント時の加圧の不均一性が考えられる。それにより、場所によって残膜の厚さに違いが生まれてしまい、エッチングでちょうどよく削れている所や削りきれていない所が存在したと考えられる。また、ZnO-NR同士がくっついて成長していることからも、横方向への成長抑制も必要と考えられる。

 

4.その他・特記事項(Others)

なし

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) M. Honda, H. Hizumi, R. Irena, N. Tiwari, Y. Saito and Y. Ichikawa, Jpn. J. Appl. Phys., 59, 045001 (2020).

(2) Q. Zhang, M. Honda, S. A. Kulinich and Y. ichikawa, Appl. Surf. Sci. 541, 148438 (2021).

(3) Q. Zhang, M. Honda, S. A. Kulinich and Y. Ichikawa, Webinar on Nanotechnology & Nanomaterials 2021, 令和2年7月29日.

(4) 張 栖岩,本田光裕,市川 洋,2020年日本表面真空学会学術講演会,令和2年11月19日.

(5) Sanusi,大矢宏之,本田光裕,市川 洋,第25回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」,令和2年11月27日.

(6) 大矢宏之,本田光裕,市川 洋,第25回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」,令和2年11月27日.

(7) 本田光裕,市川 洋,第25回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」,令和2年11月27日.

(8) Y. Matsuo, S. Kato, Q. Zhang, M. Honda and Y. Ichikawa,30th Annual Meeting of MRS-Japan 2020, 令和2年12月9日.

(9) S. Kato, Y. Matsuo, G. Thapa, Q. Zhang, M. Honda and Y. Ichikawa,30th Annual Meeting of MRS-Japan 2020, 令和2年12月9日.

 

6.関連特許(Patent)

なし

 

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