利用報告書

ナノダイヤモンド粒子のCVDダイヤモンド薄膜合成用結晶生長核としての応用
大澤映二
株式会社ナノ炭素研究所

課題番号 :S-19-SH-0018
利用形態 :機器利用 共同研究型支援
利用課題名(日本語) :ナノダイヤモンド粒子のCVDダイヤモンド薄膜合成用結晶生長核としての応用
Program Title (English) :Application of nanodiamond particles for CVD seeding of crystal growth
利用者名(日本語) :大澤映二
Username (English) :E.Ōsawa
所属名(日本語) :株式会社ナノ炭素研究所
Affiliation (English) :NanoCarbon Research Institute, Ltd.

1.概要(Summary)
 最近、我々は爆轟法ナノダイヤモンド基本粒子(以下NDと略称)の量産に成功した。NDは炭素原子約1600から成り、直径2.6nmという擬球形超微小粒子であり、種々の有望な用途が開拓されつつあるが、ここではCVDダイヤモンド薄膜の結晶成長核種としての応用を試みた。
 既にND水溶液にSi基板を浸漬して超音波洗浄するだけで約1011個/㎝2の高密度ND配列を実現し、CVDにより高性能多結晶ダイヤモンド薄膜を得ていた1。しかし、ND表面の{111}面がグラフェン化しているため、成長核としての機能を妨げていると考え、予め高温水素プラズマ処理によって還元的にグラフェン面を取り除くと、さらに好成績が得られると予想し、ND粉末に高温水素プラズマを照射する実験を行った。
 ところが、グラフェンは消滅せず、実験は失敗に終わった。
2.実験(Experimental)
長野キャンパスにあるマイクロ波プラズマCVD装置(関ダイヤモンド社製AX6350型)を流用して、Ta基板上にND粉末を広げ、水素気流を流しつつマイクロ波を照射して水素プラズマを発生させた。プラズマ温度は約850℃であった。反応の追跡は照射粉末のラマンスペクトル、TEMなどを測定して行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 ラマンスペクトルでGバンド近くに出るグラフェンピークの強度が低下せず、NDのダイヤモンド含量(60%)は増加しないままであった。これは、表面グラフェンパッチが還元分解して除かれると同時に、その直下の歪変形ダイヤモンドコア表面がグラフェン化するためと解釈される2-3。
 しかし、CVDにおけるダイヤモンド生長は、グラフェンの還元除去よりも遅い筈だから、表面に活性ダイヤモンドコアが露出して存在する時間があると考えられ、この間に水素添加が起きても不思議ではない。これは未解明のCVDダイヤモンド生成機構と関係があると思われる。4
4.その他・特記事項(Others)
信州大工学部の機器担当者(森本慎吾特任準教授、藤澤一範助教)には大変お世話になった。厚くお礼申し上げる。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)“Enhanced diamond nucleation on monodispersed nanocrystalline diamond,” Williams, O. A.; Douheret, O.; Daenen, M.; Haenen, K.; Ōsawa, E.; Takahashi, M. Chem. Phys. Lett. 2007, 445, 255-258.
(2)“Diamond nanoseeding on silicon: stability under H2 MPCVD exposures and early stages of growth,” Arnault, J. C.; Saada, S.; Nesladek, M.; Williams, O. A.; Haenen, K.; Bergonzo, P.; Ōsawa, E. Diamond & Related Materials, 2008, 17 [7-10], 1143-1149.
(3)“Growth and electronic properties of nano-diamond”, Williams, O. A.; Nesladek, M.; Daenen, M.; Michaelson, S.; Ternyak, O.; Hoffman, A.; Ōsawa, E.; Haenen, K.; Jackman, R. B.; Gruen, D. M. Diam. Rel. Mater. 2008, 17, 1080-1088.
(4)“The spatial diamond-graphite transition in detonation nanodiamond as revealed by small-angle neutron scattering,” Avdeev, M. V.; Aksenov, V. L.; Tomchuk, O.; Bulavin, L. A.; Garamus, V.; Ōsawa, E. J. Phys.: Condens. Matter 2013, 25, 445001 (7pp).

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