利用報告書

ナノプラスチックの作製方法および環境中における挙動の解明
ジンチェンコ アナトーリ
名古屋大学 大学院環境学研究科

課題番号                :S-19-NU-0051

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :ナノプラスチックの作製方法および環境中における挙動の解明

Program Title (English) :Method for fabrication of nanoplastic to study its behavior in environment

利用者名(日本語)      :ジンチェンコ アナトーリ

Username (English)     :A. Zinchenko

所属名(日本語)        :名古屋大学 大学院環境学研究科

Affiliation (English)  :Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University

 

 

1.概要(Summary)

環境中に発生するプラスチックのマイクロ・ナノ粒子は,海洋環境などにおいて大きな環境問題になっている.本研究では,環境中でのナノプラスチックの運命を明らかにするため,ナノプラスチックの人工的モデル系を作製し,その特徴を解明することを目的とする.また,ナノプラスチックの物理化学的特性,水溶液中の安定性,既存の汚染物質の沈着等について研究を行う.

 

2.実験(Experimental)

A. Rodríguez-Hernández et al., Environ. Sci.: Nano, 2019, 6, 2031-2036の論文を参考にして,ナノプラスチックの合成を行った.0.5 gのポリエチレンテレフタラート(PET)粉末(Goodfellow, GB)を40〜50℃ で攪拌しながら10 mLの90%トリフルオロ酢酸に溶解した.1000 rpm攪拌下でPET溶液に30% TFA水溶液10 mLを15分間ゆっくりと滴下し,超音波処理した.プラスチック粒子を遠心分離(12,000 rpm)した後,30 mLの20 mM ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えて,プラスチック粒子を分散させた.0.8μm孔径のシリンジフィルターでマイクロ粒子をろ過し,ナノプラスチックの分散液(図1A)が得られた.調製したプラスチックを以下のように評価した.

(1)動的光散乱法(DLS)による評価 ナノプラスチックの分散液を1 g/L 濃度になるように蒸留水で希薄して,粒径およびゼータ電位を粒径・ゼータ電位測定装置(ELSZ-2,大塚電子)を用いて常温で測定した.

(2)電子顕微鏡による可視化 ナノプラスチック粒子の写真を電子顕微鏡(JEM-2100 plus,JEOL)で撮影した.

3.結果と考察(Results and Discussion)

調製したナノプラスチックの粒径・ゼータ電位測定装置で測定行い,粒径は260±185 nm,ゼータ電位は -26 mVとの結果になった(図1B).粒子の負電荷は,粒子の表面にSDS陰イオンが吸着した原因によると考えられる.ナノプラスチックの電子顕微鏡観像(図1C)で数100 nm 程度の粒子が確認され,DLSの結果と一致している.

 

図1 (A)ナノプラスチックの分散液の写真,(B)ナノプラスチック分散液の光散乱強度分布,(C)ナノプラスチック粒子の電子顕微鏡画像.

 

以上の結果から,本研究で調製したプラスチック粒子の大きさが約100 nmであるため,ナノプラスチックの挙動に関する研究に用いる試料として適切であると言える.

 

4.その他・特記事項(Others)

なし

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

 

6.関連特許(Patent)

なし

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