利用報告書
課題番号 (Application Number):S-15-NR-0016
利用形態 (Type of Service):共同研究
利用課題名(日本語) :ナノ多孔性セラミック分離膜基盤の高度化
Program Title (English) :Enhancement of the base of nano-porous ceramic membranes
利用者名(日本語) :澤村健一
Username (English) :Ken-ichi SAWAMURA
所属名(日本語) :イーセップ株式会社
Affiliation (English) :eSep Inc
1.概要(Summary )
セラミック膜は、従来の高分子膜に比べて高い耐久性と溶解しにくい特性を有し、従来の高分子膜では適用が困難だった石油・化学産業向けの利用が期待されている。当社では、セラミック膜の薄膜化によって、高い透過性を有する分離膜の製作を行ってきた。当該分離膜の高度化には、製膜条件に対して膜構造および膜性能の相関の定性的かつ定量的な解明が必要となる。そのためこれまでにナノテクノロジープラットフォームの研究設備の試行的利用(奈良先端科学技術大学院大学・分子・物質合成プラットフォーム:課題名「セラミック膜のナノ細孔構造評価」および「ナノ多孔性セラミック分離膜の実用化」)によってナノレベルでの分離膜の構造評価・解析を行い、実用レベルの分離膜の開発に至った。
一方で、所定の透過分離性能を発揮する分離膜を歩留まり良く生産するためには、分離層下地である基盤のナノ構造精密制御が非常に重要であることが明らかになってきた。そのため本研究ではセラミック分離膜の基盤に焦点を当て、各種条件で調製したセラミック分離膜基盤のナノ膜構造評価を行い、分離膜基盤の高度化を行った。
2.実験(Experimental)
分離機能を有する分離膜層を再現性良く薄膜化するため、基体に用いる多孔質アルミナ支持体の表面の凹凸のバラツキをなくすための処理として、アルミナ微粒子による表面塗布、次いでアルミナ微粒子層の上にシリカ薄膜層の塗布を行った。平滑化したセラミック分離膜基盤の構造はSEMにて観察した。また数nm程度の膜細孔はSEMでは判別が困難であるため、膜細孔分布はナノパームポロメトリーにより評価を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に、表面処理前後の膜構造の典型的なSEM像を示す。処理前の多孔質アルミナ支持体のみであると
表面に数μm程度の凹凸、孔が存在するが、表面にアルミナ微粒子/シリカの表面処理を行うことによって、平滑な分離膜基盤を形成することができた。作製した分離膜基盤の細孔分布は、表面処理条件の調整によって、1-10 nmの範囲で細孔径を制御することができた(図2の場合は細孔径1-2 nm)。今後、このようにナノ空間を精密制御した分離膜基盤を利用することによって、各種高性能な分離膜が歩留り良く生産することが可能になると期待される。
図1 表面処理前後の分離膜基盤のSEM像.
図2 製作した分離膜基盤の細孔分布測定例
(細孔径1-2 nm程度の場合).
4.その他・特記事項(Others)
本研究において、SEM測定は奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の小池徳貴氏に協力頂きましたので、深く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)澤村健一, ナノセラミック分離膜, JSTフェア2015, 平成27年8月28日
(2)澤村健一, ナノセラミック分離膜による化学プロセスの省エネ化, 第10回けいはんなビジネスメッセ, 平成27年10月2日
6.関連特許(Patent)
なし







