利用報告書

バイオカソードとしてのナノカーボンコンポジット膜の解析
冨永 昌人
佐賀大学大学院工学系研究科

課題番号 :S-16-KU-0042
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :バイオカソードとしてのナノカーボンコンポジット膜の解析
Program Title (English) :Analysis of nanocarbon composite film for biocathode
利用者名(日本語) :冨永 昌人
Username (English) :M. Tominaga,
所属名(日本語) :佐賀大学大学院工学系研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science and Engineering, Saga University

1.概要(Summary )
カーボンナノチューブ(CNT)は優れた電気的特性と比表面積から、バイオ燃料電池の電極材としての応用が期待される。しかし、CNTは高価であるため、実用化には安価な炭素材料が好ましい。本研究では、安価な酸化グラフェン(GO)に、最小限の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を加え、SWCNT電極と同等の還元電流を得ることのできるバイオカソード電極の開発を目的としたコンポジット電極を作製した。

2.実験(Experimental)
GOの酸化状態の評価のために、XPS測定を行ったところ、炭素の酸素酸化官能基が多く、導電性が極めて低いGOであることが解った。(九州大学 分子・物質合成PFの電子状態測定システム AXIS-ULTRAを利用)
0.1 wt% SWCNTと1.0 wt% GOの混合比を変えた水溶液をホーン型超音波で分散を行った後、その分散状態をSEM観察した。(九州大学 分子・物質合成PFの超分解能走査型電子顕微鏡Hitachi SU-9000を利用) また、透過型電子顕微鏡で詳細な分散状態も合わせて評価したところ、分散状態は良好であることが解った。(九州大学 分子・物質合成PFの透過型電子顕微鏡システムJEOL2010を利用)SWCNT-GO分散液をグラッシーカーボン(GC)電極上にキャストして、SWCNT-GO電極を作製した。
SWCNT-GO電極をコール酸ナトリウム(SC)水溶液に浸漬して、SC修飾SWCNT-GO電極を作製した。このSC/SWCNT-GO電極をラッカーゼ(Lac)溶液に浸漬し、Lac修飾を施した(Lac/SC/SWCNT-GO電極)。酸素を飽和した酢酸緩衝液(pH5.0)中で溶液撹拌を行いながらサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Lac/SC/SWCNT電極では、0.698 V(vs. Ag|AgCl)からLacと電極との直接的な電子移動反応に基づく酸素触媒還元電流を観測した(Fig. 2)。一方、Lac/SC/GO電極では、酸素触媒還元電流は観測されなかった。SWCNT-GO電極のSWCNT質量比(SWCNT/ (SWCNT+GO))の増加に伴い酸素還元電流値が上昇した。SWCNT質量比0.4のとき、Lac/SC/ SWCNT電極の約60 %の還元電流を達成した。酵素反応解析シミュレーションの結果、Lacと電極間の不均一電子移動速度はSWCNT質量比の上昇に伴って増加し、SWCNT質量比0.4のとき、Lac/SC/SWCNT電極と同等の値が得られた。このSWCNT- GO電極のSEM結果より、GOとSWCNTの均一な分散の様子が観測された(Fig. 3)。(九州大学 分子・物質合成PFの超分解能走査型電子顕微鏡Hitachi SU-9000を利用)
以上の結果から、安価なGOに質量比0.4のSWCNTを加えることで、比較的低コストかつ、高性能なバイオカソード電極を作製できることが解った。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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