利用報告書

バナジウム含有ハロゲン化酵素の反応機構解明を目的としたモデル錯体合成とその反応性
梶田裕二1), 2)
1) 愛知工業大学 2)名古屋工業大学

課題番号 :S-15-NI-18
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :バナジウム含有ハロゲン化酵素の反応機構解明を目的としたモデル錯体合成とその反応性
Program Title (English) :Synthesis, Structure, and Reactivity of VHPO Functional Model Complexes
利用者名(日本語) :梶田裕二1), 2)
Username (English) :Yuji Kajita1), 2)
所属名(日本語) :1) 愛知工業大学 2)名古屋工業大学
Affiliation (English) :1) Aichi Institute of Technology 2) Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary )
 バナジウム含有ハロゲン化酵素(VHPO)は、過酸化水素、ハライドイオンおよびプロトンを用いて次亜ハロゲン酸を生成した後、有機物をハロゲン化する酵素であるが、その反応機構の詳細は明らかになっていない。そこで、本研究では、VHPOモデル錯体を合成し、これを用いて反応機構を解明することを目的とした。

2.実験(Experimental)
 既に、当研究室ではVHPOモデル錯体となるビス(ヒドロキシエチル)ピリジン骨格を有する2種類のバナジウム錯体1, 2を合成し、その構造を明らかにするとともに、VHPOの機能である芳香族炭化水素のハロゲン化に成功している(Figure 1)。今回は、同様の骨格をもち、かつ末端置換基を変更した新規バナジウム錯体を合成し、その構造を決定するとともに、反応性についても検討した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 今回配位子の末端置換基として、シクロヘキシル基を導入することを考えた。これは、有機溶媒への溶解性を保ちつつ、金属中心を大きく保護するためである。
 シクロヘキシル基を導入した配位子については、1H NMRおよびIRスペクトルを用いて合成を確認した。合成した配位子を用いてVHPOのモデル錯体となるバナジウム錯体3を合成した。合成した錯体をエタノールから再結晶することによって、黄色の結晶を得ることができたため、単結晶X線結晶構造解析によってその構造を決定した。その結晶構造をFigure 2に示した。今回も狙った通り、五配位三方両錘構造であり、錯体1および2の配位構造と大変類似した構造であった。
 次に、錯体3を用いて1,3,5-トリメチルベンゼンを基質とした基質ハロゲン化反応について検討した。その結果、錯体3についてもハロゲン化反応性を示した。また、この時の収率は、65%であり、錯体1 (50 %), 2 (30 %)よりも高い反応性を示すことが分かった。これは、シクロヘキシル基による金属中心の囲み方が、金属中心と基質との接触を程よく制御しているためであると考えられる。以上、今回我々は新規バナジウム錯体3の合成に成功するとともに、ビスヒドロキシエチル骨格を有する一連のバナジウム錯体の中で最も収率良くハロゲン化反応が進行することを明らかにした。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 梶田裕二,荒河大輝,増田秀樹 錯体化学会第65回討論会, 平成27年9月22日.
(2) Y. Kajita, D. Arakawa, H. Masuda, The International Chemical Congress of PACIFIC BASIN SOCIETY 2015 平成26年11月29日.
(3) 荒川大輝,梶田裕二,増田秀樹 日本化学会第95春季年会, 平成26年3月26日.
6.関連特許(Patent)

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