課題番号 ：S-20-MS-1015
利用形態 ：施設利用
利用課題名（日本語） ：ビスマス置換マンガン窒化物の物性解明
Program Title (English) ：Investigation for physical properties of bismuth-substituted manganese nitride
利用者名（日本語） ：川口　昂彦1), 白井　友晴2)
Username (English) ：T. Kawaguchi1), T. Shirai2)
所属名（日本語） ：1) 静岡大学学術院工学領域, 2) 静岡大学大学院総合科学技術研究科工学専攻
Affiliation (English) ：1) Faculty of Engineering, Shizuoka University, 2) Graduated School of Integrated Science and Technology, Department of Engineering, Shizuoka University.

１．概要（Summary ）
近年、弱強磁性的な振る舞いにも関わらず、大きな異常ホール効果や異常ネルンスト効果を示す「ワイル磁性体」が注目を集めている。我々は逆ペロブスカイト構造を持つマンガン窒化物であるMn3SnNに注目した。Mn3SnNはバンド構造中にワイル点を有することが理論的には予測されているが、実験的にはこれまでにワイル磁性の発現は示されていない。これはスピン軌道相互作用が弱いことが原因であると考え、本研究ではMn3SnNにスピン軌道相互作用の大きいビスマスを部分置換し、その磁気特性を調査することを目的とした。

２．実験（Experimental）
Mn3(Sn1-xBix)N粉末は固相反応法により合成した。得られた粉末の結晶相は静岡大学で所有しているX線回折(XRD)装置で評価した。また、磁気特性の評価は、分子科学研究所が所有する超伝導量子干渉磁束計(SQUID; MPMS-7およびMPMS-XL7)で評価した。

３．結果と考察（Results and Discussion）
　得られた粉末試料ではx≧0.05のいずれの試料でもBi相の析出が見られたが、Rietveld解析では逆ペロブスカイト相の格子定数の減少や、Biの置換が示唆された。Fig. 1に室温で測定されたM-H曲線を示す。Biありの試料(x = 0.10)ではBi無しの試料(x = 0)とは明らかに異なるヒステリシスが観測された。このヒステリシスは、H=0付近でくびれた特異な形状を示しており、ワイル磁性体であるMn3SnのM-H曲線とよく似ている。すなわち、Mn3(Sn,Bi)Nでも室温でのワイル磁性発現の可能性が示された。
４．その他・特記事項（Others）
なし。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 白井友晴, 川口昂彦, 坂元尚紀, 鈴木久男, 脇谷尚樹, 第36回日本セラミックス協会関東支部研究発表会, 令和2年9月17日.
(2) 白井友晴, 川口昂彦, 坂元尚紀, 鈴木久男, 脇谷尚樹, 第40回電子材料研究討論会,令和2年11月12日.
(3) 白井友晴, 川口昂彦, 坂元尚紀, 鈴木久男, 脇谷尚樹, MRM Forum 2020, 令和2年12月8日.
(4) 白井友晴, 川口昂彦, 坂元尚紀, 鈴木久男, 脇谷尚樹, 第68回応用物理学会春季講演会, 令和3年3月16日.

６．関連特許（Patent）
なし。