利用報告書
課題番号 :S-19-NM-0075
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ピンタイプマイクロアレイヤーにおけるピン品質の及ぼす蛍光シグナルへの影響
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :吉井孝平 1), 藤本菜月1)
Username (English) :K.Yoshii 1), N.Fujimoto 1)
所属名(日本語) :株式会社カケンジェネックス
Affiliation (English) :1) Kaken Geneqs Co., Ltd.
1.概要(Summary )
マイクロアレイ技術は、スライドグラス等の基板上に多種類のDNAやタンパク質などをスポットし、検体からの抽出液と反応させることで、一度に大量の解析を行うことができるものである。技術自体は20年近く前のものではあるが、現在もその需要は多く最盛期に用いられていたDNAだけでなく、抗原や抗体などのタンパク質を用いたマイクロアレイも近年開発されている。
弊社で開発したマイクロアレイヤー装置は、ピンタイプと呼ばれるカテゴリーに属しており、万年筆様のスリットの入った金属の針(=ピン)を使用し、スポットするサンプル液を採取、基盤と接触させることでスポットを行っている。
このスポットに使用するピンはかなり微細な構造をしており、中でも弊社で特許取得済みの「スクリューピン」という特殊な構造をしたピンは、通常のスリットのみのピンに比べ連続して均一なスポットができるのが特徴である。また、ピン先端は連続使用による劣化や接触による事故等の物理的破損の他、放置中の酸化被膜でもスポットに影響することが分かっている。この対策として物理的損傷の場合は顕微鏡にて確認後スペアとの交換、酸化皮膜は使用前に弱酸溶液に浸すことで除去を行っている。
しかし、上記の対策を行っているにも関わらず、ピンごとにスポット径に多少のばらつきは生じる場合がある。これらのピンは同仕様で外部発注しているが、その製造時点で各ピンに個体差が存在するのではないかと考えた。
そこで本研究では新規に発注した未使用のスクリューピンを用いて、ピンを顕微鏡撮影したのちにスポットテストを実施し、蛍光スキャナーにてスポット径を測定することで、どれだけのばらつきが生じるのかを確認し、未使用時点でのピン品質の問題の可否の検討を行うこととした。
2.実験(Experimental)
1. 新規先端直径60μmスクリューピン32本のピン先をデジタル顕微鏡(MIC-D;OLYMPUS)で撮影した。
2. Cy3入りオリゴDNAサンプルを、ピンタイプマイクロアレイスポッター(Genex2005Arrayer;カケンジェネックス)にて、共有結合タイプマイクロアレイ用スライドグラスにスポットした(1回目)。スポット数は100スポット/1ピンとした。
3. ピンホルダー中の位置による影響を除外するため、ピンを入れ替えて再度スポットした(2回目)。
4. 蛍光スキャナー(Agilent G2600 SureScan Microarray Scanner System)でスキャンした。
5. Image Jにてピン径とスリット幅、スポット径を測定した(図1)。スポット径に関しては、各ピンにてランダムに抽出した20スポット/ブロックを測定した。
図 1 スクリューピン先端概略図
60μmスクリューピン先端の拡大図を示す。
①:ピン先端径、②:ピンスリット幅
3.結果と考察(Results and Discussion)
ImageJにて測定した32本のピン先端径は、63.393-78.393μmの範囲となり、中央値は69.431μmであった。また、各ピンの平均スポット径の範囲は1回目で102-158μm、2回目で93-167μmであった。
測定した各ピン先端径と平均スポット径の相関を確かめるべく、相関係数RおよびP値を算出すると、R=0.2027、P=0.8670(>0.05)となり、この2つの値は無相関であることが分かった(図2)。
図 2 ピン先端径とスポット径
続いて、ピンスリット幅の測定値の範囲は28.301-36.932μm、中央値32.831μmであった。ピン先端径と同様に、平均スポット径との相関を確かめるべく、相関係数RおよびP値を算出すると、R=-0.035、P=0.5754(>0.05)となり、この2つの値も無相関であることが分かった(図3)。
図 3 ピンスリット幅とスポット径
上記の結果より、「スポット径はピン先端径かスリット幅に依存する」という仮説が否定されたため、顕微鏡にて先端形状を測定するだけでは、スポット径の予測が困難であることが分かった。
また、ピンホルダー中の位置を変更したところ、平均スポット径の大きさが変更前後で比較してR=0.8592、P=0.1392(>0.05)となり、有意な差は認められるものの、ピンホルダー位置の与えるスポット径への影響は小さくないものと思われる。また、ピンホルダーの中でも真ん中から右下にかけて大きい傾向がみられるため、ピンホルダー自体に歪みがある可能性が考えられる(図4)。
今後より正確なスポット径によるピンの差を検証する際は、同ピンホルダー位置にピンを配置し検討する必要がある。
図 4 ピン位置変更前後と平均スポット径
左から2つがピンホルダー中の各ピンの配置(数値はピンNo.)。右から2つが各位置での平均スポット径。(左1)ピン位置初期, (左2)ピン位置変更後,(右1) ピン位置初期での平均スポット径,(右2) ピン位置変更後の平均スポット径。単位はμm。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1) Mark S.(Ed.) (2000). Microarray Biochip Technology. Eaton Pub Co.
2) 佐々木博己、青柳一彦 編『DNAチップ実験まるわかり』羊土社、2004年
装置の利用にあたりNIMS竹村氏、森田氏、高橋氏の支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
(1)株式会社カケンジェネックス, “液の転写装置”, 特開2004-317189,平成16年11月11日







