課題番号 ：S-13-NU-0016
利用形態 ：共同研究
利用課題名（日本語） ：フェノール系誘導体を使用した導電性ポリマーの研究開発
Program Title (English) ：Research and development of phenolic derivatives for electro conductive polymer
利用者名（日本語） ：俵　由一
Username (English) ：Y. Tawara
所属名（日本語） ：旭有機材工業株式会社
Affiliation (English) ：Asahi organic chemicals industry co.,ltd.

１．概要（Summary ）
導電性ポリマーのポリ（3,4-エチレンジオキシチオフェン）：ポリ（スチレンスルホン酸）（PEDOT:PSS）は、低コストで柔軟な導電膜を形成することができ、エチレングリコール（EG）のような多価ヒドロキシ化合物を添加することにより、導電性が向上するという特徴がある１）。しかし、ITO（スズドープ酸化インジウム）並みの導電性を発現するためには、さらなる導電性の向上が求められている。
そこで、メチロール基を有するフェノール化合物(図1)が、PEDOT：PSS導電膜の導電性と安定性を向上させる効果を検証し、導電膜フィルムの特性を評価した。

２．実験（Experimental）
図1に示すメチロール基含有フェノール化合物を合成し、NMRおよび元素分析により構造を同定した。さらにPETフィルム基板上にEG(5wt%／コート液)、 ピロガロール（PYG）またはメチロール基含有フェノール化合物／PEDOT:PSS（固形分重量比1）のコート液を塗布してバーコーターで成膜後、120℃で乾燥して導電膜フィルムを作成した。得られた導電膜フィルムの表面抵抗(四探針法)、550nm光線透過率(紫外可視分光光度計)、耐湿熱性(温度60℃、湿度95%で240時間処理した前後の表面抵抗の変化率)、鉛筆硬度(JIS-K5600-5-4:1999に準拠)測定した（表1）。

図1. メチロール基含有フェノール化合物の構造
３．結果と考察（Results and Discussion）
表1. PEDOT:PSS導電フィルムの特性評価
添加
化合物 550nm光線透過率
(%) 表面抵抗
(Ω/□) 耐湿熱性
(表面抵抗
変化率) 鉛筆硬度
EG 80.6 235 1.72 4B
PYG 80.3 410 0.72 B
1a 80.8 147 1.14 2H
1b 81.2 207 1.14 2H
2a 81.0 236 0.94 2H
2b 80.6 228 0.94 2H
1aは最も導電性が高く、1b, 2a, 2bはEGと同程度の導電性を示した。さらに、1a, 1b, 2a, 2bは、EGやPYGよりも耐湿熱性試験後の表面抵抗の変化が小さく、鉛筆硬度が向上していることから、メチロール基含有フェノール化合物が導電性向上効果を有するバインダーとして機能していると考えられる。

４．その他・特記事項（Others）
参考文献1) S. Ashizawa, R. Hirokawa, H. Okuzaki, “Synthetic. Metals”, 2005, Vol. 153, p.5～p.8
本研究の成果は名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻　小長谷重次教授との共同研究により得られたものです。厚く御礼申し上げます。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) Y.Tawara and S.Konagaya ,高分子学会第23回ポリマー材料フォーラム, 平成26年11月7日

６．関連特許（Patent）
(1) Y.Tawara and S.Konagaya, “導電性高分子組成物、導電層及び導電体”, 特開2015-196749, 平成27年11月9日公開