課題番号 ：S-18-MS-1058
利用形態 ：施設利用(ナノプラット)
利用課題名（日本語） ：フタロシアニン類縁体への光照射によって発生した活性酸素種の特定
Program Title (English) ：The identification of reactive oxygen species generated by light irradiations for phthalocyanine derivatives.
利用者名（日本語） ：藤城 零1)
Username (English) ：Rei. Fujishiro 1)
所属名（日本語） ：1) 島根大学大学院総合理工学研究科
Affiliation (English) ：1) Shimane University

１．概要（Summary ）
光線力学的治療(PDT)では、がん細胞に集積した光増感剤への光照射を起点する光化学反応の結果、細胞毒性の高い活性酸素種が形成される。発生した活性酸素種の酸化的ダメージによってがん細胞の変性・壊死を引き起こし、がん細胞を死滅させ、治療する方法である。PDTの反応機構は、発生した活性酸素種の種類によって分類されるため、経由した反応機構の特定には、発生した活性酸素種の特定が必要となる。活性酸素種の直接的な観測は非常に困難であるが、活性酸素種と選択的に反応し、有機ラジカルを生成するトラップ剤を使用することで、有機ラジカルのESRスペクトルの測定結果から、発生した活性酸素種を間接的に特定することが可能である。そこで、本研究では、フタロシアニン類縁体への光の照射によって発生した活性酸素種とトラップ剤由来の有機ラジカルのESRスペクトルを測定し、発生した活性酸素種の特定と反応機構の分類を行うことを目的とした。
２．実験（Experimental）
分子科学研究所の機器センターにある電子スピン共鳴測定装置Bruker EMX Plus および E500、Xe光源THORLABS SLS400と各種カットフィルターを用いて、フタロシアニン類縁体とトラップ剤の混合溶液に光を照射しながら、室温下でESRスペクトルの測定を行った。
３．結果と考察（Results and Discussion）
フタロシアニン類縁体とトラップ剤の混合溶液に光を照射しながら、室温下でESRスペクトルの測定を行ったところ、活性酸素種として、一重項酸素、スーパーオキサイドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカルが発生していることが明らかとなり、フタロシアニン類縁体は、生体内では、Type I とType IIの反応機構を経由して反応する光増感であることが予期できる結果を得られた。
４．その他・特記事項（Others）
なし。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) R. Fujishiro, H. Sonoyama, Y. Ide, T. Fujimura, R. Sasai, A. Nagai, S. Mori, N. E. M. Kaufman, Z. Zhou, M. G. H. Vicente, and T. Ikeue, J. Inorg. Biochem.,192 (2019) 7–16.
(2) Rei Fujishiro, Katsumi Yoshino, Takuya Fujimura, Ryo Sasai, Takahisa Ikeue,10th International Conference on Porphyrins and Phthalocyanines, S31-P-004, Germany (2018年7月).
(3) 藤村 卓也, 藤城 零, 有田 一貴, 山野 大地, 池上 崇久, 笹井 亮, 2018年光化学討論会, 2P-60, 兵庫 (2018年9月).
(4) 山口 真季, 竹下 翔, 藤城 零, 藤村 卓也, 笹井亮, 森 重樹, 池上 崇久, 2018年日本化学会中国四国支部大会, 1P-009, 愛媛 (2018年11月)
(5) 十倉 あずさ, 細田 悠, 藤城 零, 池上 崇久, 2018年日本化学会中国四国支部大会, 1P-010, 愛媛 (2018年11月)
(6) 河本 真以子, 藤城 零, 鈴木 優章, 池上 崇久, 2018年日本化学会中国四国支部大会, 2P-015, 愛媛 (2018年11月)
(7) 山口 真季, 竹下 翔, 藤城 零, 藤村 卓也, 笹井 亮, 森 重樹, 池上 崇久, 日本化学会第99春季年会, 3H4-12, 兵庫 (2019年3月)
(8) 十倉 あずさ, 細田 悠, 尾崎 俊介, 藤城 零, 藤村 卓也, 笹井 亮, 池上 崇久, 本化学会第99春季年会, 3H4-13, 兵庫 (2019年3月)
６．関連特許（Patent）
なし。