利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1012
利用形態 :機器センター施設利用
利用課題名(日本語) :フッ化物正極の磁気的性質の解明
Program Title (English) :Magnetic properties of fluoride cathodes
利用者名(日本語) :高見剛1)
Username (English) :T. Takami1)
所属名(日本語) :1) 京都大学 先端イノベーション拠点施設
Affiliation (English) :1) Center for Advanced Science & Innovation, Kyoto University
1.概要(Summary )
オキシフッ化物やフッ化物は、超伝導体、イオン伝導体、フッ化物シャトル電池として注目を集めている。例えば、フッ素イオンを伝導種としたフッ化物シャトル電池では、既存のリチウムイオン電池よりも多くの電子が反応に関与し、高容量が期待されている。しかし、大半の電極物質が2元系の金属フッ化物であり、サイクル劣化などいくつかの問題点がある。そこで、我々はフッ化物正極材料として3元系に着目し、高容量な蓄電池の開発を進めている。今回、BiとFeを含む新奇3元系フッ化物の充放電前後における磁性について調べた。
2.実験(Experimental)
MPMS-7(Quantum Design社製)を用いて、初期物質および充放電後の磁化を測定した。粉末試料を石英管に封止して(大気非ばく露環境下で)、2-300 K, 1 kOeでゼロ磁場冷却(ZFC)と磁場中冷却(FC)過程で測定を実施した。また、一定温度下で磁化の磁場依存性も測定して、磁性の詳細についても調べた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
充放電に伴い正極中に電子が出入りすると、遷移金属元素の電子数やスピン状態が変化し、これらが磁性に反映されると推察される。初期物質の磁化測定の結果を図1に示す。磁化率は降温とともに250 Kで急激に減少した。また、磁化は250 K以下で磁場に対して比例傾向を示した。このことから、3元系フッ化物は、ネール点250 Kの反強磁性体であることがわかった。
放電に伴い正極からフッ素が抜けることが予想され、これに伴い放電後の磁性に変化が観測された。特に、250 Kにおける磁化の急激な変化がわずかに残り、初期物質からの構造相転移(コンバージョン反応)を伴う電池反応の可能性が低いことが示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
技術支援に関して、伊木志成子氏に大変お世話になり、ここに厚く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Takami, K. Matsui, H. Senoh, N. Taguchi, M. Shikano, H. Sakaebe, and T. Fukunaga, Materials Research Meeting 2019 (MRS-J), 令和元年12月10日-14日.
(2) 高見剛,松井啓太郎, 鹿野昌弘, 栄部比夏里, 福永俊晴, 第67回応用物理学会春季学術講演会, 令和2年3月12日-15日.
(3) 高見剛,河原克巳, 齊藤高志, 神山崇, 福永俊晴, 安部武志, 第67回応用物理学会春季学術講演会, 令和2年3月12日-15日.
6.関連特許(Patent)
なし。