利用報告書

プラズマCVDによる低温SiN膜の成膜機構の解明
黄 成和1), 鎌滝晋礼1), 白谷正治1)
九州大学大学院システム情報科学研究院

課題番号 :S-20-KU-0020
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :プラズマCVDによる低温SiN膜の成膜機構の解明
Program Title (English) :Study of mechanism of deposition of SiN in Plasma CVD
利用者名(日本語) :黄 成和1), 鎌滝晋礼1), 白谷正治1)
Username (English) :S.H. Hwang1), K. Kamataki1), M. Shiratani1)
所属名(日本語) :1) 九州大学大学院システム情報科学研究院
Affiliation (English) :1) Kyushu University

1.概要(Summary )
プラズマ化学気相堆積(CVD)は、主要な薄膜プロセス技術の一つであり、窒化シリコン(SiNx),酸化シリコン(SiO2)、炭素薄膜など、半導体デバイス作製に必須材料の薄膜堆積に用いられている。今回は、炭素膜膜に着目し、Ar+CH4プラズマCVD法による高密度水素化アモルファスカーボン(a-C:H)薄膜の高速堆積について、放電条件(ガス圧力、ガス組成比、ガス流量、プラズマ発生電極と基板間距離、パルスバイアス電圧)やナノ粒子混入の影響について検討した。得られた結果から、高ガス圧力かつ狭い電極基板間距離において、高い製膜速度を実現可能であること、基板へのパルスバイアス電圧印加により高いガス圧力においても高密度化が可能であること、ナノ粒子の混入により、高密度a-C:H薄膜堆積の課題であるストレス緩和が可能であることを示唆する結果を得た。

2.実験(Experimental)
本研究ではa-C:H薄膜堆積に平行平板型プラズマCVD装置を用いた。装置中央に設置した円盤型の電極に28 MHz高周波電圧を印加し、下部基板ホルダ電極との間で放電を生成した。用いたガスはArとCH4であり、圧力を0.2Torrから7Torrとした。電極基板間距離依存性を調べるため、基板ホルダを階段状にして、15㎜から25㎜まで基板位置を変えた。
気相中で発生・成長し、基板に堆積したカーボンナノ粒子のサイズ・堆積量は透過型電子顕微鏡で評価した。堆積膜の構造についてはラマン分光高度計とX線電子分光計測装置(電子状態測定システム:島津製作所製 AXIS-ULTRA)を用いた。堆積膜の屈折率・膜厚はエリプソメトリー分光計測装置を用いて計測した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
初めに各種パラメータ依存性について簡単に説明したのち。ナノテクプラットフォームで評価した、堆積膜のX線電子分光計測結果について説明する。
まず、製膜速度・膜密度の圧力及び電極基板間距離依存性を調べた。電極基板間距離が短くなり、基板が放電電極に近づくにつれて、製膜速度は増加傾向にある一方で膜密度はわずかに増加する。また電極基板間距離15㎜において、圧力が増加するにつれて、製膜速度は増加する一方、膜密度はほぼ一定であった。結果、圧力7Torr, 電極基板間距離15mmにおいて、製膜速度と膜密度は、60nm/min、1.44g/ccであった。また基板への1us幅のパルスバイアス電圧を電圧-202V、繰り返し周波数25kHzで印加したところ、製膜速度と膜密度は66.7nm/minかつ1.67g/ccまで増加した。
次にナノ粒子混入の効果を調べるため、スパッタリングによるカーボン薄膜堆積とプラズマCVDによるカーボンナノ粒子堆積を組み合わせたナノ粒子混入膜を作製した。ナノ粒子堆積により、膜密度がほぼ変化することなく、膜ストレスを36%低くすることに成功した。得られた膜のsp2/sp3結合比を調べるため、X線分光計測装置を用いてC1sスペクトルを評価したところ、sp2成分が全体の68%, sp3が20%であった。

4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) S.H. Hwang, et al., Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 59 (2020) Art. No. 100906. 他
6.関連特許(Patent)
なし。

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