利用報告書
課題番号 :S-19-NI-0042
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ペロブスカイト鉄化合物薄膜のメスバウアー分光測定
Program Title (English) :Mössbauer spectroscopy of perovskite iron compound thin films
利用者名(日本語) :近松 彰1), 片山 司1), 若山 悠有佑1), 陰山 洋2), 長谷川 哲也1)
Username (English) :A. Chikamatsu1), T. Katayama1), Y. Wakayama1), H. Kageyama2), T. Hasegawa1)
所属名(日本語) :1) 東京大学大学院理学系研究科, 2) 京都大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science, Uinv. of Tokyo,
2) Graduate School of Engineering, Kyoto Univ.
1.概要(Summary)
ペロブスカイト型鉄化合物であるSrFeO2F(SFOF)薄膜およびSrFeO2.5(SFO)薄膜におけるFeの価数・スピン状態と磁気秩序状態を明らかにするために、57Fe内部転換電子メスバウアー分光(CEMS)測定を実施した。
2.実験(Experimental)
パルスレーザー堆積法およびトポタクティックフッ化法により57Fe 50%エンリッチさせたSFO薄膜およびSFOF薄膜を作製し、CEMS法にて室温における57Feメスバウアー分光スペクトルを測定した。速度校正はα-Fe箔のスペクトルで行い、α-Feのスペクトルの重心位置を速度0 mm/sの基準に設定した。スペクトルのフィッティングはプログラム“Normos”を用いて行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に得られたSFO、SFOF薄膜の57Feメスバウアースペクトルおよびフィッティングの結果を示す。
SFO薄膜のスペクトルは、磁気分裂サブスペクトル2組+非磁性四極子分裂サブスペクトル1組でフィッティングされた。内部磁場が大きい磁気分裂サブスペクトルは八面体サイトのFeに、内部磁場が小さい磁気分裂サブスペクトルは四面体サイトのFeと同定された。また、6本のピーク強度比から、磁気モーメントは面内配向傾向にあることが示唆された。
SFOF薄膜では、磁気分裂サブスペクトル1組+非磁性四極子分裂サブスペクトル1組でフィッティングされた。磁気分裂サブスペクトルのアイソマーシフトおよび内部磁場の値から、SFOF薄膜中のFeは3価高スピンであることが示唆された。また、6本のピーク強度比から、磁気モーメントの方向はほぼ面内配向にあることが明らかになった。
両者の磁気分裂サブスペクトルの線幅に注目すると、SFOF薄膜の方がSFO薄膜に比べてはるかにブロードであった。これはSFOF薄膜中のFeが様々な磁気的・結晶構造的局所環境を持つことを示しており、格子中の2個のFイオンがcis配置(あるいは一部trans配置)で薄膜全体にわたってランダムに配位していることを示唆している。
図1:SFO、SFOF薄膜の57Feメスバウアースペクトルおよびフィッティング曲線
4.その他・特記事項(Others)
本研究は名工大・壬生教授、尾上支援員の支援により行われた。また本研究は、科研費15H02024, 16H06438, 16H06441, 19H02594の助成を受けて実施された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。