利用報告書

ホウ素錯体をクロモフォアとする太陽電池色素の高性能化
烏田諭志, 中川智裕, 小野克彦
名古屋工業大学大学院工学研究科

課題番号 :S-16-MS-1092
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ホウ素錯体をクロモフォアとする太陽電池色素の高性能化
Program Title (English) :Development of high performance sensitizers containing organoboron
chromophores
利用者名(日本語) :烏田諭志, 中川智裕, 小野克彦
Username (English) :S. Karasuda, T. Nakagawa, K. Ono
所属名(日本語) :名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary )
分子科学によってテクノロジーや産業に貢献することを目的に、色素増感太陽電池の研究を行っている。この分野では、有機色素の高性能化が課題となっており、新たなクロモフォアの探索が行われている。これまでに、ボロンジケトネート錯体にクロモフォアとしての性質を見出し、これをビルディングブロックとする太陽電池色素を開発した[1]。そこで、この特性をさらに追究して高性能色素を開発する研究を行った。ホウ素錯体は強力な電子アクセプタ性を有するため、電子ドナーと組み合せると分極構造を簡単につくることができる。本研究では、光吸収によって生じる分子内電荷移動遷移に着目し、その方向とチタニア電極への電子注入方向を揃えた含ホウ素色素を研究した。

2.実験(Experimental)
本研究課題は、計算科学センターにおいて先行研究として取り組んでおり、DFT計算からチタニア電極上に吸着した色素の電子状態を研究してきた。この解析法が確立できれば、実際に作動している色素の状態が理解できるため、高性能色素を効率的に開発することができる。一方、実験化学において固体状態での分子構造や分子配列に関する検証の必要性が高まった。そこで、平成28年11月に施設利用に申請し、平成29年1月から単結晶X線構造解析による調査を行った。
単結晶の作製は、種々の溶媒による再結晶法を試したが、良好な単結晶が得られなかった。これは、ホウ素キレート部位の加水分解反応が起こるなど、取り扱っているホウ素錯体固有の性質に由来している。そこで、ホウ素化試薬の中で色素を合成しながら単結晶を作製する手法を検討し、得られた単結晶をRigaku MERCURY CCD-1とCCD-2で測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
現在までに色素構造の解明には至っていないが、新たな単結晶作製法の検討により、測定可能な単結晶が得られるようになってきた。また、今回は使用しなかったが、今後は微小結晶用Rigaku MERCURY CCD-3の利用も考えたい。引き続き実験を重ねてノウハウを蓄積すれば、色素の構造解析が可能になると思われる。理論計算と実験化学から色素分子を理解することで、高性能色素の開発がより効率的に進行すると期待される。

4.その他・特記事項(Others)
[1] Y. Mizuno, Y. Yisilamu, T. Yamaguchi, M. Tomura, T. Funaki, H. Sugihara and K. Ono, Chem.-Eur. J. 2014, 20, 13286.
本研究は(公財)旭硝子財団、(公財)高橋産業経済研究財団、JSPS科研費JP15K05422の助成を受けたものです。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Suzuki and K. Ono, 日本化学会第97春季年会(2017), 平成29年3月17日.
(2) M. Tsuchikawa and K. Ono, 日本化学会第97春季年会(2017), 平成29年3月19日.
(3) F. Yumioka and K. Ono, 日本化学会第97春季年会(2017), 平成29年3月19日.
(4) F. Ishikawa, H. Yokoi and K. Ono, 日本化学会第97春季年会(2017), 平成29年3月19日.

6.関連特許(Patent)
なし。

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.