利用報告書
課題番号 :S-16-JI-0047
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :マイクロ波によるNi/マイエナイトの合成及び燃料電池用の水素発生への展開
Program Title (English) :Synthesis of Ni / Mayenite by Microwave for Hydrogen Generation for Fuel Cell
利用者名(日本語) :ビスバル・ヘイディ
Username (English) :H. Visbal
所属名(日本語) :1)京都大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1)Engineering Faculty、Kyoto University
1.概要(Summary )
燃料電池は環境にやさしく、発電効率が高いため、多様な用途・規模のエネルギー源として期待されている。しかし、発電に必要な水素を気体で運搬・貯蔵するためには大容量で高耐圧の容器が必要となり、危険かつ非効率である。必要な場所で必要な分だけ水素を発生させられる固体水素源として、マイエナイトという酸化物について研究してきた。マイエナイトは、正に帯電したケージと電荷補償のためのケージ内のアニオンからなるが、水素雰囲気下で焼成することで水素分子やH-をケージ内に取り込み、それらが水素源として働く。新規固体水素源であるマイエナイトをゾルゲル法により合成した。これにNiを添加することで水素発生量を増加させることに成功した。
2.実験(Experimental)
Ca(NO3)2・4H2O 28.77 gとAl(NO3)3・9H2O 53.59 gを原料として、ゾルゲル法でマイエナイトを合成した。これに (CH3COO)2Ni・4H2Oを、加え、メタノール中で2時間撹拌した後、溶媒を除去して真空乾燥させて焼成する、という方法でNiを添加した。水素雰囲気下で焼成することで水素を吸蔵させ、水素発生実験を行った。マイエナイト0.045 gに脱気済みの硝酸(10%)1 mLを加え、大気圧下60℃で60分撹拌を行い、水素を発生させた。評価方法として、XRD測定、TEM観察、光電子分光装置理研計器製 UPS AC-2, ガスクロマトグラフィー測定を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1. Ni添加後のマイエナイトのTEM画像
表1. マイエナイトの水素発生量
Ni なし Ni 添加
水素発生量(ml/g) 10.9 17.8
X線回折パターンより、Ni添加によってマイエナイトの構造はほとんど変化していないことが分かった。TEM観察結果から、マイエナイト表面に粒径10 nmほどのNiナノ粒子が確認できた。Niを添加したマイエナイトは添加していないマイエナイトに比べて、約1.6倍の水素を発生した。一方で、水素を吸蔵させる際マイクロ波ではなく管状炉で処理したところ、Ni添加による水素発生量の増加は見られなかったので、ケージ内の電子が水素発生量に何らかの影響を及ぼしていると推測される。Niナノ粒子を用いたガスクロマトグラフィー測定の結果から、NiがH+と反応して水素を発生する反応は電子の有無に関わらず、起こっていないことが示された。
光電子分光法の結果からマイクロ波で焼成したサンプルが仕事関数は低下していると見られた。
4.その他・特記事項(Others)
特許出願中
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







