利用報告書

ラマンマッピング法を用いた多孔質炭素材料の結晶化度測定
多田 若菜, 正木 一嘉
新日鉄住金化学株式会社 総合研究所

課題番号 :S-17-OS-0002
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ラマンマッピング法を用いた多孔質炭素材料の結晶化度測定
Program Title (English) :Crystallinity measurement of porous carbon materials by Raman imaging
利用者名(日本語) :多田 若菜, 正木 一嘉 
Username (English) :Wakana Tada, Kazuyoshi Masaki
所属名(日本語) :新日鉄住金化学株式会社 総合研究所
Affiliation (English) :NIPPON STEEL & SUMIKIN CHEMICAL CO . LTD .
キーワード/Keyword    :多孔質炭素, 結晶化度, ラマン分光, ラマンマッピング

1.概要(Summary)
 炭素材料の結晶化度は熱処理温度と相関し、その指標としてはXRDやラマン分光の測定値が用いられる。炭素材料をラマン分光測定すると、特徴的なDバンド、Gバンドとよばれるピークが観察され、結晶化度はこれらのバンドの強度比(ID/IG)や、Gバンドの半値幅(G-FWHM)によって示される1)。顕微レーザーラマン分光装置では倍率を高くすることで局所的な測定が行うことができ、測定点数を増やすことで分布を知ることができる。しかし、旧来の装置では測定時間が長く、広範囲を測定することが難しかったことから、高速測定が可能なラマン分光装置を用い多孔質炭素の局所的な結晶化度分布の評価を試みた。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S19 レーザーラマン顕微鏡 ”Raman touch”
【実験方法】
文献に記載の手法に従い、規則性メソポーラスカーボンを得た2)。得られた規則性メソポーラスカーボンを2水準の温度(Tlow<Thigh)で熱処理し、高速でラマン分光測定が可能なナノフォトン社製 ”Raman touch”を用い、結晶化度分布の測定を試みた。

3.結果と考察(Results and Discussison)
 初めに、ライン光源を用い広範囲の分布測定を試みたがカーボン粉末の凹凸の影響により、高倍率では視野全域に焦点を合わすことが難しく(Fig.1)、ライン光源を用いた測定では十分な強度のスペクトルが得られなかった。そこで、測定範囲を焦点が合致する約5μm四方に限定(Fig.1黄色四角)し、点光源を用いラマン分光測定を行った。ID/IG分布をFig.2に示す。

Tlow品の焦点が合致しない箇所(白丸部)で一部ID/IGが低い値を示したものの、Tlow品、Thigh品いずれも焦点が合致する範囲ではID/IGの分布は狭く、均質な材料であることを確認した。また、Thigh品はTlow品と比較しID/IGが低く、高温処理による結晶化度の向上が確認された。
 粉体を対象とした高倍率の測定を行う場合、粉体の粒度が粗いと焦点を視野全域で合すことが難しく、正確な値を得ることが困難となる。このため、高倍率測定をする際は対象を細かく粉砕し、表面を均すことが望ましいと考える。

4.参考文献
1) TANSO 2006 [No. 221]2 2-7
2) Langmuir 2008, 24, 7500-7505

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
 なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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