利用報告書

ラマン分光による配線用多層グラフェン膜の品質・形状評価
片桐 雅之
株式会社東芝

課題番号 :S-16-NM-0052
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ラマン分光による配線用多層グラフェン膜の品質・形状評価
Program Title (English) :Characterization of doped graphene by Raman spectroscopy
利用者名(日本語) :片桐 雅之
Username (English) :M. Katagiri
所属名(日本語) :株式会社東芝
Affiliation (English) :Toshiba Corporation

1.概要(Summary)
LSIやメモリ等の半導体デバイスにおいて微細幅低抵抗配線の開発が求められている。グラフェンはバリスティック伝導性や高電流密度耐性などの優れた物性を有し、低抵抗配線としての応用が期待されている。我々はグラフェン配線実用化に向けてグラフェン低温成長技術ならびに低抵抗化に向けたドーピング技術の開発を進めている。ラマン分光は、グラフェンの品質を評価するのに有効な手法であることのみならず、グラフェンへのドーピング状況を調べることにも有力な手法である。本報告ではドーピングを行ったグラフェン膜に対してマッピング測定を行い、グラフェン面内のドーピング状況を評価した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 高速レーザーラマン顕微鏡(装置の取り扱い説明・トラブルシュートの支援を受けた。)

【実験方法】
測定に用いたグラフェンは、金属触媒上に低温成長させたものをSiO2/Si基板に転写し、ドーピング処理を施したものである。ラマン分光測定は、レーザー波長: 532 nm、レーザー強度: 0.5 W、露光時間: 30 sに設定し、80µm×40µmの領域のマッピング測定を行った。

3.結果と考察 (Results and Discussion)
Fig.1にドープグラフェンのラマンマッピング像を示す。ラマンマッピング像は、ラマンスペクトルにおけるG+ピーク(1600 cm-1、ドーピングによりシフトしたGピーク)とGピーク(グラフェン起因のピーク、1580 cm-1)の強度比(G+/G)を0< G+/G≤1として可視化したものである。なお、G+/Gが1以上となる測定箇所についてはG+/G:1として表示されている。Fig.1に示したように、グラフェン膜内でG+/Gに分布がみられることがわかり、ドーピング状況の違いを識別できた。今後、ドーピング条件の異なるグラフェン膜のラマン分光評価を行い、比較検討していく。

Fig. 1 Raman mapping image of G+(1600 cm-1)/G(1580 cm-1) ratio distribution in doped graphene.

4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究は、NEDOの「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」に係わる業務委託として実施した。
他支援機関利用:NIMS微細加工プラットフォーム

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) M. Katagiri et al., Intercalation Doping of MoCl5 into Low-Temperature-Grown Multilayer Graphene, 29th International Microprocesses and Nanotechnology Conference, 2016, November, 10.

6.関連特許(Patent)
なし。

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