利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1003
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ラマン分光法による骨粗鬆症モデルの解析
Program Title (English) :Raman spectroscopic study for osteoporosis model
利用者名(日本語) :石丸泰光1), 大嶋佑介1)
Username (English) :Y. Ishimaru1), Y. Oshima1)
所属名(日本語) :1) 愛媛大学大学院医学系研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Medicin, Ehime University
1.概要(Summary)
骨粗鬆症などの骨代謝疾患の病態理解においては,破骨細胞による基質の溶解と骨芽細胞による再石灰化の均衡が破綻し,骨基質の脆弱性を引き起こしていることが知られている.本研究では,骨の機械的強度を担保している骨基質の化学組成,具体的には骨芽細胞が産生するコラーゲン分子に着目して,骨粗鬆症モデル動物の解析により骨粗鬆症における骨折リスク評価の新しい指標を見出すことを目的としている.具体的には,顕微ラマン分光法の分子分光学的計測を中心とした解析を行い,骨組織の光学特性を明らかにするとともに,コラーゲンの架橋構造の安定化にかかわるメカニズムの解明を目指す.これまでの研究で,骨粗鬆症モデルラット脛骨の脱灰組織切片の計測を行い,シャム群との比較において骨マトリックス中のコラーゲンを含む有機分子のラマンスペクトルにおいて微小ながら変化が見出された.この結果を踏まえて,多変量解析法によるラマンスペクトルの定量法の妥当性について統計学的な評価を行い,骨折リスク評価の指標の確立を目指す.
2.実験(Experimental)
ラマン分光装置 RENISHAW in Via Reflexを用いて,マウス長管骨の分子組成の計測を試みた.骨質低下のリスクファクターとして報告されている,加齢や骨粗鬆症などによって,骨基質のラマンスペクトルが影響を受けるかどうか検討を行った.まず,若齢マウス(月齢3カ月齢)および高齢マウス(月齢25カ月齢)の脛骨を採取後,脱灰し凍結切片を作製した.凍結切片を金属基盤上に置いて,脛骨骨幹部中央のラマン分光の測定および,フーリエ変換型赤外分光(FTIR)計測およびを行い,若齢群と高齢群でそれぞれラマンスペクトル,赤外吸収スペクトルの比較を行った.
3.結果と考察(Results and Discussion)
コラーゲン成熟度の指標とされているAmide Iの吸光強度の比に着目し,凍結脱灰標本のFT-IRによる計測を行った結果,骨中央部ではAmide Iのピーク比(1660 cm-1/1690 cm-1)の値が,若齢群と比較して老齢群で有意に低く,骨表面でも同様の傾向を認めたが有意差は認めなかった.同様の試料をラマン分光装置 RENISHAW in Via Reflexを用いて測定を行った.測定されたラマンスペクトルに対して,多項式曲線を用いたベースライン補正処理を施したのち,主成分分析を行ったところ,若齢群と老齢群の比較において,顕著な差が見出せなかった.今後は試料調製法を見直し,ラマンスペクトルのS/Nの向上を図った上で,主成分分析にかける前のラマンスペクトルの規格化の方法について検討を進め,ラマン分光分析による骨基質の化学組成変化の抽出を試みる.
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 大嶋佑介「ラマン分光・イメージング技術を用いた骨基質の分子組成の解析」第6回 Orthopedic Research Club,かずさアカデミアパーク 2015年11月15日(口頭発表)
(2) 石丸泰光,三浦裕正,大嶋佑介,今村健志「赤外・ラマン分光を用いた高齢マウスにおける骨質変化の検討」第6回 Orthopedic Research Club,かずさアカデミアパーク2015年11月15日(口頭発表)
(3) 大嶋佑介「ラマン分光・イメージング技術の開発と生体計測への応用」第38回日本分子生物学会年会ワークショップ 最先端の光イメージング技術と医学・生物学への新たな展開」神戸ポートアイランド 2015年12月3日(招待講演)
6.関連特許(Patent)
なし







