利用報告書

ラマン散乱光解析を用いた悪性リンパ腫と加齢性変化の鑑別
岩﨑優子

課題番号                :S-20-NM-0046

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :ラマン散乱光解析を用いた悪性リンパ腫と加齢性変化の鑑別

Program Title (English) :Discrimination between lymphoma cells from age-related deposits under retinal pigment epithelium using Raman Spectroscopy

利用者名(日本語)      :岩﨑優子

Username (English)     :Y. Iwasaki

所属名(日本語)        :東京医科歯科大学眼科学教室

Affiliation (English)  :Department of Ophthalmology and Visual science, Tokyo Medical and Dental University

 

1.概要(Summary )

眼科疾患の診断には、非侵襲的な網膜評価法であるカラー眼底写真、蛍光眼底造影検査、眼底自発蛍光写真、光干渉断層写真など種々の評価法が活用されている。眼内悪性リンパ腫の網膜下病変との鑑別に苦慮するものに加齢性の沈着物「ドルーゼン」がある。ドルーゼンは高齢者の眼底におよそ95%と高率に存在する(Vingerling JR et al. Ophthalmology. 1995, Klein R et al. Ophthalmology. 1997)ため、網膜下にのみ病変が存在する早期の眼内悪性リンパ腫の診断が非侵襲的に行えるようになれば、早期診断により患者の生命予後改善に貢献できる。

本課題では、トランスウェルに育てた網膜色素上皮細胞下に貯留した沈着物と、細胞下に浸潤した悪性リンパ腫細胞の鑑別をラマン散乱光撮影で行うことを試みた。

 

2.実験(Experimental)

使用装置名:高速レーザーraman顕微鏡「RAMAN plus」

 

網膜色素上皮細胞はFujifilmから購入したiPS-RPE「iCell」を使用した。細胞は東京医科歯科大学で培養。

トランスウェルの選択においては、メンブレンのラマン散乱光を事前に評価した。東京医科歯科大学において3か月間、トランスウェルでiPS-RPEを培養。

サンプラテック社の定温輸送ボックスを用いて細胞を運搬した。培養液からPBS(-)へ変更し、トランスウェルからメンブレンおよびシート状になった細胞を外し、石英のガラスボトムdishへ入れ、100倍水浸対物レンズを用いて観察およびラマン散乱光の測定を行った。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

トランスウェルは、ミリセルの親水性PTFE製、ポリカーボネート製、ポリエチレンテレフタレート製、および、コーニングのポリカーボネート製、FalconのPET製のものを用い、ラマン散乱光を測定。自発蛍光が少なく、比較的ラマン散乱光のピークの少ないものとして、ミリセルの親水性PTFEのトランスウェルを選択した。

 

図 メンブレン由来のラマンスペクトラムの例

青:ミリセルの親水性PTFE、赤:ミリセルのポリカーボネート

 

このメンブレン上でiPS-RPEを3か月培養し、ラマン散乱光を観察した。細胞の持つ自発蛍光が強く、メラニン由来と考えられるラマン散乱光は観察できたが、そのほかの小さなピークの観察は困難であると考えられた。

今後は、長波長のレーザーを用いてラマン散乱光評価を試みる必要がある。

 

4.その他・特記事項(Others)

機器利用に際しNIMS李香蘭様、服部晋也様、高橋みどり様の支援を受けた。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

 

6.関連特許(Patent)

なし

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