利用報告書

ランダム積層CVDグラフェンの電気・磁気的特性
植村 孝平, 前橋 兼三
東京農工大学大学院 工学府 物理システム工学専攻

課題番号 :S-16-NI-33
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ランダム積層CVDグラフェンの電気・磁気的特性
Program Title (English) :Electrical and magnetic characteristics of random-stacking CVD graphene
利用者名(日本語) :植村 孝平, 前橋 兼三
Username (English) :K. Uemura, K. Maehashi
所属名(日本語) :東京農工大学大学院 工学府 物理システム工学専攻
Affiliation (English) :Tokyo University of Agriculture and Technology

1.概要(Summary )
層と層をランダムに積層させた多層グラフェンは、単層グラフェン由来の線形バンドが保持されると考えられており、近年、注目されている。電気特性においては、高移動度な特性を保ったまま並列伝導により電流値が増大するため、LSIの代替配線や高感度センサへの応用が期待される。磁気特性においては、Fig. 1に示すようにランダム構造ではないHOPGでも室温で磁気浮上するほど大きな反磁性を有する。その積層構造をランダムにすることで、薄膜に非常に大きな反磁性を持たせることができると期待されている。本研究では、多結晶の単層CVDグラフェンを複数回基板に転写するという簡便な方法でランダム構造の作製を試み、電気・磁気的特性の評価を行った。
2.実験(Experimental)
電気特性においては、1層及び3層積層させたCVDグラフェンをチャネルに用いた電界効果トランジスタを作製し、バックゲート電圧に対するドレイン電流を測定した。磁気特性においては、15層積層させた積層CVDグラフェンを高感度SQUID磁化測定装置でM-H特性を測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
【電気特性】
単層CVDグラフェンを1層及び3層積層させた積層グラフェンのFET特性をFig. 1に示す。AB 積層の多層グラフェンでは、層間結合により線形バンド構造が崩れるため単層に比べて移動度は減少するが、今回作製したランダム積層 CVD グラフェンでは、単層グラフェン由来の高移動度を保ったまま電流値が増大していることがわかる。この結果は、積層CVDグラフェンがグラフェンガスセンサの S/N 比向上やLSI代替配線として有用であることを示唆している。
【磁気特性】
単層CVDグラフェンを15層積層させたサンプルを5 KでM-H測定を行った結果をFig. 2に示す。グラファイトなどのAB積層では線形的なM-H特性を示すが、単層グラフェンは特異的なランダウ準位を形成するため非線形なM-H特性を持つ。Fig. 2において、非線形なM-H特性が得られていることから、通常のAB積層とは異なる特性が得られたといえる。

4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は,JSPS科研費(15H03986)の支援を受けました。ここに感謝の意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 植村 孝平, 第64回応用物理学会春季学術講演会 平成29年3月14日

6.関連特許(Patent)
なし

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