利用報告書

リプログラミングにおけるエピジェネティック制御機構の解析
西村 健
筑波大学医学医療系

課題番号 :S-18-NM-0028
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :リプログラミングにおけるエピジェネティック制御機構の解析
Program Title (English) :Epigenetic regulation in retrovirus silencing during reprogramming
利用者名(日本語) :西村 健
Username (English) :Ken Nishimura
所属名(日本語) :筑波大学医学医療系
Affiliation (English) :University of Tsukuba, Faculty of Medicine

1.概要(Summary )
iPS細胞誘導時に起こるレトロウイルスのサイレンシングに関わる分子を同定し、それを元に、内在性レトロウイルスを含むレトロウイルス配列からの遺伝子発現をエピジェネティックに制御する機構を明らかにする。そのために、特定のDNAに結合しているタンパク質やDNA、RNAの分離が可能な、iChIP system (Fujita et al. PLoS ONE, 2011)を利用する。このsystemでは、解析対象となるDNAの近傍にLexAタンパク質結合配列を挿入する。そして、Flagタグを付加したLexAタンパク質を発現させることにより、抗Flag抗体を用いた免疫沈降を介して、目的のDNAに結合しているタンパク質等を分離する。
そこでまず、レトロウイルスサイレンシングに関わると思われるレトロウイルスのゲノム領域を特定し、その領域の近傍にLexA結合配列を挿入したレトロウイルスを作製した。次に、マウス線維芽細胞(MEF)に、作製したレトロウイルス、Flag-LexA発現ウイルスを感染させた後に、iPS細胞誘導を開始する。そしてサイレンシングを開始した細胞からクロマチンを抽出し、抗Flag抗体を用いた免疫沈降を行う。得られたDNA-タンパク質複合体に含まれるタンパク質を同定するために、LC/MS/MSを用いた質量分析を行った。

2.実験(Experimental)
タンパク質複合体に対して、DTTによる還元処理、IAAによるシステインのカルバミドメチル化を行なった後に、Trypsin切断を行う。そして、断片化されたペプチドをC-TIPを用いて精製し、最終的にTFA_Aに溶解させる。次に、精製したペプチド断片を、分子・物質合成プラットフォームのLC/MS/MS機(LC: Nano-Advance (BRUKER), MS: Q Exactive Plus (Thermo))を用いて質量分析した。得られたスペクトルの解析には、Mascot server (MATRIX Science)を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
質量分析の結果、LexAを発現し、サイレンシングが誘導された細胞に対して、抗Flag抗体を用いた免疫沈降を行なったサンプルからは520個のタンパク質が同定された。それに対し、control IgG抗体を用いた免疫沈降によって210個、サイレンシングを誘導していない細胞に対して抗Flag抗体を用いた免疫沈降を行なったサンプルから332個のタンパク質が同定された。これらの同定されたタンパク質を比較することによって、サイレンシングを誘導した際に、特異的にレトロウイルスゲノムに結合してサイレンシングを誘導すると考えられる候補タンパク質を215個同定した。
その後、いくつかの候補タンパク質に対して、siRNAによる発現抑制を行いながらサイレンシング誘導を行ったところ、サイレンシングが誘導されなくなったものも存在したことから、一連の解析によって、サイレンシング関連タンパク質の同定に成功したと考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
LC/MS/MS機器の使用や前処理、データの解析について技術指導して頂きました、分子・物質合成プラットフォームの服部晋也様には大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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