利用報告書

ロタキサン構造をもつ高分子薄膜表面のキャラクタリゼーション
春藤 淳臣1),松野 寿生2),田中 敬二1,2)1) 九州大学大学院統合新領域学府, 2) 九州大学大学院工学研究院

課題番号 :S-16-KU-0024
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ロタキサン構造をもつ高分子薄膜表面のキャラクタリゼーション
Program Title (English) :Characterization of Polymer Film Surface with Rotaxane Structure
利用者名(日本語) :春藤 淳臣1),松野 寿生2),田中 敬二1,2)
Username (English) :A. Shundo1), H. Matsuno2), K. Tanaka1,2)
所属名(日本語) :1) 九州大学大学院統合新領域学府, 2) 九州大学大学院工学研究院
Affiliation (English) :1) Department of Automotive Science, Kyushu University,
2) Department of Applied Chemistry, Kyushu University

1.概要(Summary )
近年、高分子材料の最外領域における構造・物性がその機能発現と密接に関係していることが明らかになりつつある。したがって、表面に望みの性質や機能を付与するためには、最外領域における高分子鎖のダイナミクスを正確に理解し、精密に制御することが必要となる。そこで、我々は、高分子最外領域へのロタキサン構造の導入に着目した。表面における高分子鎖を環状化合物で包接することによって、そのダイナミクスの精密制御が期待できる。本研究課題では、高分子鎖が環状化合物によって包接された表面を構築し、水中における表面形態を評価した。
2.実験(Experimental)
アジド基を側鎖に有する高分子を合成した後、水面上に展開・圧縮し、水平付着法に基づきポリメタクリル酸メチル (PMMA) 膜表面に積層した。次いで、クリック反応に基づき、末端にアミノ基を有するポリエチレンオキシド (PEO) 鎖をアジド基に導入した。PEO鎖を表面に有する高分子膜をシクロデキストリン (CD) および2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸を含む水溶液に室温下24時間浸漬させ、表面にCDを導入した高分子膜を得た。以後、それぞれの膜はPMMA、GMaz、PEO、PEO/CDと表記する。各膜を純水に浸漬し、室温にて2時間静置した後、「環境制御型多機能走査プローブ顕微鏡」を用いて表面形態を評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Figure 1は、水中におけるPMMA、GMaz、PEO、PEO/CDの (a) 形状像および (b) 位相像である。いずれの試料においても明確な構造は確認されなかった。また、各試料の二乗平均面粗さ (RRMS) は、PMMA、GMaz、PEO、PEO/CDの場合で、それぞれ0.27 nm、0.20 nm、0.30 nm、0.47 nmであった。したがって、膜表面のロタキサン構造は、水中においても安定であると考えられる。

Figure 1. Topological and phase images of PMMA, GMaz, PEO and PEO/CD immersed in pure water.

4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
1. “Aggregation States and Dynamics of Rotaxaned Surface”, The 11th SPSJ International Polymer Conference, 14 December 2016.
2. “Bioinert Properties of Polymer Surface with Rotaxane Structure”, 2016 Taiwan-Japan Bilateral Polymer Symposium, 8 September 2016.
他 学会発表3件
6.関連特許(Patent)
なし。

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