利用報告書
課題番号 :S-16-NI-39
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :三段パルス電気化学堆積Fe-S-O薄膜のメスバウアースペクトル
Program Title (English) :Mössbauer spectra of Fe-S-O films deposited by three-step electrodeposition
利用者名(日本語) :市村正也
Username (English) :M. Ichimura
所属名(日本語) :名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
電気化学堆積法を用いて作製された太陽電池用硫化酸化鉄Fe-S-O薄膜に熱処理を施し,室温にて57Feメスバウアー分光測定を行った.前年度までに一定電位で堆積された膜の評価を行ったが,今年度は三段パルス印加で堆積した膜を評価した.
2.実験(Experimental)
Fe-S-O薄膜は電気化学堆積法によりITO基板上に作製した.堆積電位は,10秒間隔で−1.0,−0.4,0 V(vs SCE電極)と変化させた.厚さは0.3 m程度で,オージェ電子分光測定により求めた組成比S/Fe,O/Feは,ともにおよそ1である.一定電位(−1.0 V)で堆積した膜は黒色,不透明だが,この膜は可視域で約40%の透過率を持ち,半透明である.また,ラマン散乱測定では,320~330 cm−1に,硫化鉄に起因すると思われるピークが観測されている.
57Feメスバウアースペクトルは,内部転換電子メスバウアー分光法(CEMS法)を用いて室温にて測定し,得られたスペクトルを最小自乗フィッティングした.
3.結果と考察(Results and Discussion)
メスバウアースペクトルを図に示す.測定には25日を要した.スペクトルは,ピーク強度比1:1の四極子分裂ダブレット2本2組でほぼフィッティング可能であった.得られたアイソマーシフトISおよび四極子分裂QSの値を表に示す.2組のうち1組(全積分強度の80%)は3価のFeに起因すると考えられ,これまでに評価したFeOOHの信号に似通っているが,ISがやや小さいなどの違いも見られる.もう1組(全積分強度の20%)は2価のFeに起因すると考えられ,原料薬品であるFeSO4の水和物である可能性が考えられる.
現段階では,オージェ電子分光,ラマン散乱,メスバウアー分光の結果を矛盾なく説明することができておらず,引き続き評価検討が必要である,
D2490 IS
(mm/s) QS
(mm/s) Area
(%)
No. 1 0.35 0.72 80.0
No. 2 1.15 2.37 20.0
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







