利用報告書
課題番号 :S-16-NU-0036
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :両親媒性ブロック共重合体薄膜のミクロ相分離構造解析
Program Title (English) :Structural Analysis for Amphiphilic Block Copolymer Films
利用者名(日本語) :藪 浩
Username (English) :H. Yabu
所属名(日本語) :材料科学高等研究所
Affiliation (English) :AIMR, Tohoku University
1.概要(Summary )
ポリスチレンとポリ(ジヒドロキシスチレン)からなる両親媒性ブロック共重合体(ポリスチレン-b-ポリ(ジヒドロキシスチレン))(PVCa-b-PSt)の研究を行っている。本年度は、薄膜中のプロトン伝導性に関する研究を行った。本支援では、前年度に引き続き、この両親媒性ブロック共重合体の薄膜中のミクロ相分離構造由来のモルフォロジーの解析を行い、加湿下のin-situ斜入射小角X線散乱(GI-SAXS)実験を行った。
2.実験(Experimental)
PVCa-b-PSt薄膜およびPVCa-b-PSt薄膜中にて銀イオンを還元した膜(PVCa-b-PSt/Ag膜)を作製し、それぞれ薄膜の加湿下のin-situ GI-SAXS測定を行った。X線散乱装置には、Rigaku FR-E/R-AXIS IVを用い、斜入射測定には、斜入射ステージを使用した。加湿のコントロールは、GIステージに加湿セルを取り付け、日本ベル社製BelFlow-1にて湿度制御した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Figure 1に、PVCa-b-PSt薄膜を相対湿度(RH)40%(a)(および90%(b)にてin-situ GI-SAXS測定した二次元GI-SAXS像を示す。また、これらの面内方向の1次元プロファイルをFigure 2に示す。RH 40%にて、面外(qz)および面内(qy)方向にq = 0.17 nm-1 (d = 36.8 nm)の一次散乱が観察された。1次元プロファイルをとると、q = 0.35 nm-1 (d = 18.4 nm)の2次の散乱ピークまで読み取ることができ、1次ピークとの面間隔の比が、1/2となるためPVCa-b-PSt薄膜は、ラメラ構造であることが帰属できる。この結果は、薄膜断面の透過型電子顕微鏡観察の結果とも一致した。RH 90%加湿下のin-situ測定の結果(Figure 1bおよびFigure 2)から、PVCa-b-PSt薄膜の散乱プロファイルにほとんど変化はないと判断される。よって、PVCa-b-PSt薄膜は加湿下においてもモルフォロジーはほとんど変化しないことがわかった。一方、PVCa-b-PSt/Ag薄膜は、等方的な強い散乱を示し、ミクロ相分離構造由来の散乱は観察できなかった。
本PVCa-b-PSt薄膜およびPVCa-b-PSt/Ag薄膜は、加湿下にてプロトン伝導性が増加する。しかしながら、加湿下では、ミクロ相分離構造に変化は見られなかった。
Figure 1. 2D GI-SAXS images for a PVCa-b-PSt film at RH 40%(a) and RH 90% (b).
Figure 2. in-plane 1D GI-SAXS profiles for a PVCa-b-PSt film at RH 40%(a) and RH 90% (b). The data extracted from Figure 1.
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H Yabu, J Matsui, M Hara, S Nagano, Y Matsuo, Y. Nagao, Langmuir, Vol. 32(2016)p.p. 9484-9491.
6.関連特許(Patent)
なし







