利用報告書
課題番号 :S-18-NU-0024
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :乾燥時のセメント水和物の変質およびコンクリート中の内部損傷
Program Title (English) :Alternation of cement based hydrates due to drying
利用者名(日本語) :丸山一平1), 栗原諒1)
Username (English) :I Maruyama1), R. Kurihara2)
所属名(日本語) :1) 名古屋大学大学院環境学研究科,
Affiliation (English) :1) Graduate school of Environmental Studies、Nagoya University
1.概要(Summary )
コンクリート構造物の長期利用においては,コンクリート中の変質についての化学的知見を得たうえで,物性として構造物の安全評価を行う必要がある。本研究では建設後約50年経過した構造物内部のコンクリートについて,走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った。
2.実験(Experimental)
利用した装置は,走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-7500F,固体NMR(300MHz)装置を使用した。
試料は,50年経過した極厚部材(1500㎜)から,コアドリリングにより,φ10x800㎜の試験体を2体,両面から採取し,そのうえで,おおよそ100㎜ピッチでダイヤモンドソーで切断した。そのうえで,窒素環境で乾燥させたのち,10㎜角程度に切断したのち,樹脂で包理し,研磨を行い,観察に供した。固体NMRは装置の修理がまにあわなかったため,本契約期間内には利用ができなかった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
50年経過したコンクリート構造物中において,特定の環境条件では,天然鉱物としても希少な鉱物が生成する可能性があることを確認した。また,一般的な温湿度環境下では,骨材の一部が溶解し,セメントの水和物と反応し,結晶性の低い水和物が生成することを確認した。
補完のため,実施したX線粉末回折/Rietveld分析による未反応セメントの部材内の分布,ならびにSEMによりの面分析によって定量した分布は,図1のとおりであり,大きな変化はない。しかしながら,強度に差がみられたため(本報告には記載せず),なんらかの反応が考えられた。
図1 断面内の未反応セメント鉱物の分布
本研究でのSEM分析では,その反応として用いた骨材の反応が推察される結果となった。今後,さらに詳細な分析を行う必要がある。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は中部電力との共同研究において用いた。試料の準備には,Jiri Rymes氏の協力を得た。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
現在,以下の論文を投稿中である。
(1) Jiří Rymeš, Ippei Maruyama, Ryuu Shimamoto, Yoshihito Tanaka, Kazuhiro Yokokura, Syohei Sawada, Yoshikazu Ichikawa, Osamu Kontani: Long-term material properties of a thick concrete wall exposed to ordinary environmental conditions in a nuclear reactor building: the contribution of cement hydrates and feldspar interaction, Journal of Advanced Concrete Technology.
6.関連特許(Patent)
なし