利用報告書

低温培養条件における神経幹細胞株(MEB5)の糖タンパク質の網羅的解析
鈴木 佑典
日本大学理工学部

課題番号(Number of project) : S-16-NM-0089
利用形態(Type of user support) : 機器利用
利用課題名(日本語) : 低温培養条件における神経幹細胞株(MEB5)の糖タンパク質の網羅的解析
Program Title (English) : Comprehensive (glycol)proteome analysis in neural stem cell (MEB5) under low temperature culture condition
利用者名(日本語) : 鈴木 佑典
Username (English) : Y. Suzuki
所属名(日本語) : 日本大学理工学部
Affiliation (English) : College of Science and Technology, Nihon University

1.概要(Summary )
体温管理療法(脳低温療法)は,脳傷害後,早期に脳温を32℃(低温培養条件)まで低下させることにより,脳神経細胞死を抑制する治療法であり,臨床応用されている.そして,同様の低温培養条件下の神経幹細胞株(MEB5)においても,上皮成長因子(EGF)枯渇に伴うアポトーシス誘導を抑制することが報告されているが,その機構は完全には明らかになっていない.
近年,O-GlcNAcをはじめとする細胞の糖タンパク質上の糖鎖構造変化がアポトーシス制御機構に関与している可能性が示唆されていることから,本研究では,EGF枯渇下および低温培養条件において変化する糖タンパク質の同定,構造解析,および機能解明を目的とする.

2.実験(Experimental)
MEB5細胞を通常条件(37℃)または低温条件(32℃),及びEGF存在下(+)または非存在下(-)の4条件で24時間培養し,タンパク質を抽出した.その後,3-アミノフェニルボロン酸アガロースを用いて糖タンパク質を精製した後,還元アルキル化,トリプシン消化,およびZipTip μC18による脱塩処理後,液体クロマトグラフィーと質量分析装置システムを組み合わせたLC-MS/MS(Orbitrap, S-NM-046)による各条件の網羅的プロテオーム解析を行った.

3.結果と考察(Results and Discussion)
LC-MS/MSを用いて各条件における(グライコ)プロテオーム解析を行った結果,それぞれ3000前後のペプチド断片が同定され,1000種近くの(糖)タンパク質が同定された.
先行研究において,電気泳動により分離後の発現に差異のある各バンドから糖タンパク質を切り出し,ゲル内消化後,マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析装置(MALDI-TOF/TOF MS)を用いたMSおよびMS/MS解析による(グライコ)プロテオーム解析やレクチンブロット解析による糖タンパク質の糖鎖構造変化を解析しているが,それらの結果と本研究結果を比較したところ,各培養条件下で変化が確認されていた複数の糖タンパク質が同定されていた.
今後は同定された多くの糖タンパク質の糖鎖構造変化とアポトーシス抑制機構の関連性について,さらに解明を進めていく予定である.

4.その他・特記事項(Others)
本研究の遂行にあたり,技術指導して頂きましたNIMS分子・物質合成プラットフォームの竹村太郎博士,服部晋也博士に感謝いたします.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし.

6.特許関連 (Patent)
なし.

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.