利用報告書
課題番号 :S-17-NM-0064
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :体温管理療法培養条件におけるアポトーシス抑制に関連する糖タンパク質の
糖鎖構造解析
Program Title (English) :Glycoproteome analysis in neural stem cell under hypothermia condition
利用者名(日本語) :鈴木 佑典1), 野口 花織1),鈴木 實2),野田和彦1)
Username (English) :Y. Suzuki1), K. Noguchi1), M. Suzuki2), K. Noda1)
所属名(日本語) :1) 日本大学大学院物質応用科学専攻, 2) 筑波大学グローバル大学院
Affiliation (English) :1) College of Science and Technology, Nihon University, 2) School of Integrative and Global Majors, Tsukuba University
1.概要(Summary )
心停止による低酸素,外傷,出血などで損傷を受けた脳に対し,早期に一定期間,脳温を低下させる(32℃~34℃)ことにより脳の細胞死(アポトーシス)を抑制する体温管理療法(脳低温療法)が開発され,臨床応用されている.そして,上皮成長因子(EGF)枯渇に伴う神経幹細胞株(MEB5)のアポトーシス誘導条件においても,体温管理療法と同様の培養条件(低温条件)によるアポトーシスの抑制について報告されているが,未だそのアポトーシス制御機構について完全には解明されていない.
先行研究において,液体クロマトグラフィーと質量分析装置システムを組み合わせたLC-MS/MS(Orbitrap, S-NM-046)による各条件の網羅的プロテオーム解析を行った結果,多くの(糖)タンパク質を同定したことから,本研究では,上記のプロテオーム解析結果の再現性を得ること,さらに同定されていない糖タンパク質の同定を目的として,LC-Orbitrap MSによる網羅的プロテオーム解析を行った.
2.実験(Experimental)
MEB5細胞を通常条件(37℃)または低温条件(32℃),及びEGF存在下(+)または非存在下(-)の4条件で24時間培養し,タンパク質を抽出した.界面活性剤の除去後,3-アミノフェニルボロン酸アガロースを用いて糖タンパク質を精製した後,還元アルキル化,トリプシン消化,およびZipTip μC18による脱塩処理後,液体クロマトグラフィーと質量分析装置システムを組み合わせたLC-MS/MS(Orbitrap, S-NM-046)による各条件の網羅的プロテオーム解析を行った.
3.結果と考察(Results and Discussion)
LC-MSおよびMS/MS解析を行った結果,上記4条件で24時間培養したMEB5細胞の糖タンパク質を用いたプロテオーム解析により,4300前後のペプチド断片から1200前後の糖タンパク質を同定した(図2).この同定された糖タンパク質の中には,体温管理療法の培養条件で発現が異なるものも多く観察され,さらに,アポトーシスへの関与が報告されている糖タンパク質も検出されていた.
図2 (a) 各培養条件におけるLC-Orbitrap MSスペクトル
(b) 各培養条件において検出されたペプチド断片数およびタンパク質数
4.その他・特記事項(Others)
本研究の遂行にあたり,技術指導して頂きましたNIMS分子・物質合成プラットフォームの箕輪貴司博士,竹村太郎博士,服部晋也博士に感謝いたします.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Yusuke Suzuki, Kaoru Noguchi, Rumi Shimoyama, Shinya Hattori, Taro Takemura, Takashi Minowa, and Yasunori Kushi 日本化学会第98春季年会2018, 平成30年3月21日
6.関連特許(Patent)
なし