利用報告書

修飾色素分子の開発とその評価
松井栄樹
福井工業高等専門学校 物質工学科

課題番号 :S-16-J1-0009
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :修飾色素分子の開発とその評価
Program Title (English) :Synthesis and evaluation of functional dye molecules
利用者名(日本語) :松井栄樹
Username (English) :E. Matsui
所属名(日本語) :福井工業高等専門学校 物質工学科
Affiliation (English) :National Institude of Technology, Fukui College

1.概要(Summary )
本研究ではでんぷん(アミロース)をエステル化する方法として,水を溶媒として用い,環境負荷の少ない変換法であるショッテンバウマン反応を選択し検討を行った.得られた生成物は1H NMR, 13C NMR, IR,MALDI測定により同定を行った.また,アミロースは同様の反応条件にてシンナモイル化およびp-tブチルベンゾイル化が進行し,他の多糖類であるペクチンのベンゾイル化,シンナモイル化も進行した.
MALDI測定を実施することで,水溶性多糖類のエステル化反応について,繰り返し単位質量の面から明らかになった.

2.実験(Experimental)
水溶性多糖類を飽和Na2CO3水溶液に溶解した後,室温で塩化ベンゾイルまたは塩化p-tブチルベンゾイルをゆっくり滴下し,12時間撹拌した.
生成した沈殿物をろ過後,蒸留水で洗浄し,50℃で3時間真空乾燥し,得られた生成物についてMALDI測定により同定を行った.
MALDI測定はBruker社製 UltrafleXtremeを用いてDHBAをマトリックスとして使用し,20000回の積算を行った.

3.結果と考察(Results and Discussion)
予備的な実験から多糖類のMALDIによるイオン化は困難であることが予測されたが,アミロースの測定結果からはグルコース骨格の糖鎖がNa+付加体として観測された.例えば1662 のシグナルはC6H12O6(C6H10O5)9Na+として帰属され,マスパターンが一致するとともに,グルコース骨格に相当する162 Massずつ増加する様子が確認できた.
ベンゾイル化体については,アミロースを構成するグルコース骨格にベンゾイル基がそれぞれ2個ついている糖鎖がNa+付加体として強度が強く観測された.例えば1521のシグナルは6H12O6(C6H10O5)3(C7H4O)8Na+として帰属され,ベンゾイル基に相当する104 Massずつ増減する様子が確認できた.
4.その他・特記事項(Others)
MALDI測定について,技術相談から機器利用までナノマテリアルテクノロジーセンター大坂一生博士,宮里朗夫博士の支援を受け実施した.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 松井栄樹,吉田竜二,辻大介,木本雄一朗,大塚雄市,高分子論文集, 73, 570-574 (2016).

6.関連特許(Patent)
なし。

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