利用報告書
課題番号 :S-20-NM-0013
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :光るコラーゲン発現誘導可能な細胞株の樹立とコラーゲン生合成過程の解析
Program Title (English) :Establishment of cell lines having inducibility of tagged collagen
利用者名(日本語) :田中利明1)
Username (English) :T. Tanaka1)
所属名(日本語) :1) 東京工業大学生命理工学院
Affiliation (English) :1) Dep. of Life Sci. and Tech., Tokyo Institute of Technology
1.概要(Summary)
コラーゲンは、生体構成タンパク質の 30% 以上を占めるありふれたタンパク質であるが、その生合成過程には未解明部分が多く、そのためにコラーゲン異常を起因とする臓器線維症や膠原病などは難治性疾患となっている。利用者は、従前法で解析不可能なコラーゲン生合成過程を、新技術(光るコラーゲン)により分子細胞レベルで解析可能にした。本研究では、病因細胞でのコラーゲン生合成過程を解析し難治性疾患の原因解明に手がかりを得るため、光るコラーゲン安定発現細胞株を樹立する。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
【実験方法】
昨年度からの継続プロジェクトとして、ヒト皮膚線維芽細胞の光るコラーゲン安定発現細胞株の樹立に取り組んだ。ヒト正常不死化線維芽細胞株HDF/TERT1および BJ5taに対し光るコラーゲン発現ベクターの導入を行った。導入後、20% FBS添加、G418 非存在下で培養を行い、1ヶ月で光るコラーゲン発現細胞をセルソーターにより選別した。これらを増やした後、培地GFPアッセイ法により光るコラーゲン導入細胞株候補集団を絞った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig.: Cell sorting of candidates with visualized collagen I.
2019年度の結果を踏まえ、光るコラーゲン発現ベクター導入後にG418選別を行わず、FBS 20% にすることで生存細胞割合を上げたところ、外来DNAがゲノム中で十分に固定したと考えられる1ヶ月後に行ったセルソーターによって、GFP蛍光が有為に上昇した細胞集団を濃縮することに成功した。しかし、先行実施したHDF/TERT1細胞は、新型コロナ流行のため中断することとなった。現在、BJ5ta細胞により候補細胞集団の取得に成功しており、ここからシングルセルを単離することでクローン化に進む予定である。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究の遂行に関して機器、技術、実験に関する支援を頂いたNIMS竹村太郎 氏、箕輪貴司 博士、東工大 守矢恒司 博士に深く感謝します。「光るコラーゲン」プロジェクトについてアドバイス頂いた東工大 生駒俊之 先生並びにNIMS花方信孝 先生に深く感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 田中利明, 可視化I型プロコラーゲンのライブイメージングによる細胞内領域の可視化および活性化肝星細胞における変化, 第72回日本細胞生物学会, 2020/6/9~11.
(2) 田中利明,可視化I型コラーゲンによる生合成と分泌のライブイメージング, 化粧品開発展 大阪 アカデミックフォーラム, 2020/9/9.
(3) 守矢恒司, 森田浩美, 箕輪貴司, 花方信孝, 田中利明, 可視化I型プロコラーゲンによるコラーゲンのプロセシングおよび分泌輸送経路の解析, 第43回日本分子生物学会, 2020/12/3.
6.関連特許(Patent)
(1) 田中利明、生駒俊之、田中順三, 「コラーゲン融合タンパク質、及びそれを用いた薬剤のスクリーニング方法」, WO2016152882 A1, 2016年9月29日.