利用報告書
課題番号 :S-18-NR-0029
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :光圧によるシトロクロムcのアミロイド線維形成の研究
Program Title (English) :Research on amyloid fibril formation of cytochrome c by laser trapping
利用者名(日本語) :杉山輝樹1), 廣田俊2)
Username (English) :T. Sugiyama1), S. Hirota2)
所属名(日本語) :1) 国立交通大学応用化学系, 2) 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学領域
Affiliation (English) :1) Dep. Appl. Chem, NCTU, 2) Div. Mat. Sci., NAIST
1.概要(Summary)
これまで、レーザートラッピング(光圧)法を用いて、溶液中の様々な種類の分子/クラスターおよびナノ粒子の集合体および結晶の作製に成功し、そのメカニズム、ダイナミクス関して議論してきた。最近、光圧によるシトロクロムc(Cyt c)二量体(G45C)のアミロイド線維作製に成功し、その生成メカニズムについて議論した。本研究では、光圧によるCyt cのアミロイド線維生成機構をより詳細に議論するため、異なる位置にジスルフィド結合を有する2種類のCyt c二量体(E104CおよびA83C)を試料として用い、アミロイド線維形成のジスルフィド結合位置依存性を調べた。
2.実験(Experimental)
波長1064 nmの連続波レーザーを光圧の光源として使用し、E104CおよびA83Cの重水溶液中に集光した。試料溶液には、アミロイド線維検出用の色素としてチオフラビンTを添加し、405 nmのレーザーを励起光光源として使用した。生成したアミロイド線維の構造を透過型電子顕微鏡(JEOL JEM-3100FEF)により確認した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
集光レーザーをE104Cのバッファー溶液中に照射すると、直径約4 μm の凝集体が集光点に形成された。生成した凝集体に対して続けてレーザーを照射すると、凝集体の中心部分(直径約2 μm)の透過率が減少した。その後、この中心部分が1 μm程度にまで収縮し、同時に蛍光強度は急上昇し始めた。この収縮はアミロイド線維の核形成に対応していると考えている。
次に、集光点を移動することによりこの凝集体を連続的に作製し、その溶液の凝集体を超音波処理によってほどいた後、透過型電子顕微鏡による観察を行った。(下図)
左図のように、アミロイド線維は、それらが凝集したバンドル構造として観察された。バンドルは数十nmメートルから数百nm程度、アミロイド線維は、数nm程度であった。このように、E104Cは光圧によってアミロイド線維が形成されることが分かった。
一方、A83Cの重水溶液中にレーザーを照射すると、E104Cの場合と同様に、まずは直径約4 μm凝集体が集光点に形成され、凝集体はそのまま大きく成長し続け、最終的には直径約9μmまで成長した。しかしながら、E104Cの場合とは異なり、蛍光の急激な増大は観察されなかった。この結果は、A83Cのアミロイド線維がE104Cに比べて形成されにくいことを示唆している。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、台湾科技部研究計画 (MOST 107-2113-M-009-002-)、JSPS科研費 JP16H06507(新学術領域研究「光圧ナノ物質操作」)、JSPS科研費 JP 18K19146 (挑戦的研究(萌芽))の助成のもとで実施された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし