利用報告書

光学ガラス表面の特性評価
長澤圭祐
株式会社コシナ

課題番号 :S-16-SH-0026
利用形態 :機器利用型
利用課題名(日本語) :光学ガラス表面の特性評価
Program Title (English) :Characterization of Optical Glass Surface
利用者名(日本語) :長澤圭祐
Username (English) :Keisuke Nagasawa
所属名(日本語) :株式会社コシナ
Affiliation (English) : COSINA Co., Ltd.

1.概要(Summary )
光学ガラスの薄膜の成膜品質は、ガラス表面の構造・組成・微細な欠陥等により左右されるため、ガラス表面の特性を知ることは非常に重要である。
この研究では、成膜後に不良が起こる光学ガラスレンズの基材について、強い透過光で目視観察すると正常なレンズと比較して表面が薄く白濁していることに着目し、成膜前のレンズ表面の構造観察、成分分析を行った。
2.実験(Experimental)
レンズ表面の構造観察には電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いた。光学ガラスは絶縁物であるため、白金パラジウムコーティングを施し観察を行った。
成分分析には、正常なレンズと不良の起きるレンズの2種類を用意し、X線光電子分光装置(XPS)を用いて、サーベイスキャンモードによる定性分析、ナロースキャンによる高エネルギー分解能測定を行い比較検討した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
FE-SEMを用いてレンズ表面を観察した結果、特徴的な構造を見つけることは出来なかった。おそらく表面の白濁は、研磨面を反映したエッジを持たず非常に薄くなだらかな構造をしており、FE-SEMでの観察が難しいと考えられる。
次にXPSによるレンズ表面の成分分析の結果を図1に示す。サーベイスキャンモードによる定性分析を行った結果、正常なレンズと不良の起きるレンズとではピーク位置の差は確認されなかった。
また、レンズ表面は有機物を吸着するため1)、有機系汚染の可能性を考え、C1s付近のナロースキャン測定を行った。ピーク高さに若干の差が有るものの決定的な差は確認されなかった。

図1.(a)XPSサーベイスキャンスペクトル, (b)XPSナロースキャンスペクトル
(Hand:不良の起きるレンズ,good:正常なレンズ)
しかしながら、微量な炭素の差をより高感度な分析が可能であるTOF-SIMSを用いて分析を行っている事例もあり2)、より高感度な分析手法も検討する必要があると考える。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1) 土橋正二「ガラス表面の物理化学」,講談社(1979)pp.38-43
2) 林 泰夫,松本 潔,工藤 正博,「ガラス表面のコンタミネーションコントロール」NEW GLASS 16 ,2,52-57 (2001)
謝辞
信州大学 カーボン科学研究所 研究員 小畑 美智子氏には、研究を進めるに当たり、日頃より有益なご助言を戴いた。ここに感謝の意を表する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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