利用報告書

光学異性体をもつ有機伝導体DHTTP系の電子スピン共鳴研究
中村敏和1),西川浩之2
1) 分子科学研究所, 2) 茨城大学大学院理工学研究科

課題番号 :S-19-MS-1061
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :光学異性体をもつ有機伝導体DHTTP系の電子スピン共鳴研究
Program Title (English) :ESR study of chiral organic conductor DHTTP systems
利用者名(日本語) :中村敏和1),西川浩之2
Username (English) :T. Nakamura1), H. Nishikawa2)
所属名(日本語) :1) 分子科学研究所, 2) 茨城大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :1) Institute for Molecular Science, 2) Grad. Sch. Sci. Eng., Ibaraki Univ.

1.概要(Summary )
茨城大の西川らにより,縮小π電子系ドナーに不斉を導入したキラルドナー(S, S)-DM-MeDH-TTP(Fig. 1(a))が開発され,そのPF6塩およびAsF6塩に関して,結晶構造ならびに物性研究が報告されている.電気伝導度は常圧で半導体的で,磁化率は250K近傍になだらかなピークを持つ低次元反強磁性体的な挙動を示す.しかしながら,室温での電気伝導は比較的高く,2GPa以上の高圧力印加で金属状態が安定化する.この絶縁状態は電荷秩序状態が示唆されるが詳細は理解されていない.また,磁化率は30-40K以下からCurie的な増大を示すが,この系の基底状態も不明である.一方で,ラセミドナー(±)-DM-MeDH-TTP(Fig. 1(b))に対する研究も進んでいる.

我々は,この系の電子状態を微視的な観点から理解するために磁気共鳴研究を開始した.金属絶縁体化機構の起源ならびに低温電子状態を理解するために,まずは,[(S, S)-DM-MeDH-TTP]2AsF6塩に対する電子pin共鳴(ESR)測定を行った.ラセミ体は2019年度末に試料を得たので,2020年度に実施する予定である.

2.実験(Experimental)
ESR測定は分子科学研究所機器センター保有のBruker E500分光器を用い,単結晶試料を石英棒にマウントしゴニオヘッドを用いて行った.液体ヘリウムは分子科学研究所機器センターから供給・支援されている.

3.結果と考察(Results and Discussion)
室温でのg値の角度変化測定から,ESR信号がドナーラジカル由来であることを確認した.積分強度から見積もられるスピン磁化率はSQUIDの結果と対応しており,本質的なスピンを観測していると言える. 50K以下から広い方のESR信号の強度が急速に減少し40K以下で消失しているようにみえるので,この温度近傍で相転移が起こっていると示唆される.5K,500〜9500Guassの磁場範囲でESR測定を行ったが,狭い常磁性信号を除き反強磁性共鳴信号は観測されなかった.現在のところ,基底状態はスピン一重項状態ではないかと考えている.常磁性状態のESR線幅の振る舞いは,温度低下とともに単調に増加している.このような温度変化は極めて特異である.現在,理論研究者との議論を行っている.

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

©2026 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.