課題番号                ：S-20-NM-0031

利用形態               ：機器利用

利用課題名（日本語）    ：分子インプリント高分子膜の不均一構造の解析

Program Title (English) ：Analysis of heterogeneous structure of molecularly imprinted polymer film

利用者名（日本語）       ：大河内茉奈¹⁾, 成田陽¹⁾,吉見靖男¹⁾

Username (English)     ：M. Okouchi¹⁾, H. Narita, Y. Yoshimi ¹⁾

所属名（日本語）        ：1) 芝浦工業大学工学部応用化学科

Affiliation (English)  ：Dept. Appl. Chem., Shibaura Institute of Technology

１．概要（Summary）

分子インプリントポリマー(MIP)は、鋳型分子に対する特異結合能を有する合成高分子である。MIP薄膜の透過性は鋳型との特異結合によって変化する性質（ゲート効果）がある。しかし、ゲート効果のメカニズムはまだ解明されていない。この解明のために、鋳型との特異的相互作用による内部形態を分析できるMIP自己支持膜を開発した。この自己支持膜は、鋳型物質の存在下において開孔率、溶質拡散速度が変化することを確認している^[1]。今回はMIP自己支持膜に蛍光官能基を導入し、鋳型との特異相互作用に伴う膨潤挙動を、蛍光強度から観察できるかを評価した。

２．実験（Experimental）

鋳型としてのD-フェニルアラニン（D-Phe）の存在下で、メタクリル酸、2-ビニルピリジン、トリエチレンジメタクリレート(MW 286)とポリエチレングリコールアクリルレート(PEDA：MW 1156)、アリルフルオレセインを石英板の間で共重合させ膜を形成した。鋳型を、抽出してMIP自己支持膜を得た。アリルフルオレセインの量は、全モノマーの中で8.2 ppmとした。

0.0 ｍM Phe , 0.5 mM D-Phe , 0.5 mM L-Pheの条件下で、それぞれに24 h以上浸漬させた膜の蛍光強度の分布を、共焦点レーザー顕微鏡(TCS SP5, Leica)を観察した。

３．結果と考察（Results and Discussion）

Fig.に示すように、0.5 mM のD-Pheの親戚によって、約2倍蛍光強度が増大し、蛍光物質8.2 ppmで0.0 mM Pheに対して0.5 mM D-Pheが約8倍、0.5 mM L-Pheは約4倍の蛍光強度を示した。この蛍光の増強は、PheとMIP中に形成した空隙との特異的相互作用で、MIP自己支持膜を形成する高分子マトリックスが膨潤し、蛍光官能基間の自己消光の割合が下がったことを反映している。透過速度変化を支配している膜深部に強い蛍光強度変化を示した。これは、透過速度変化と蛍光強度変化に著しい相関があることを示唆している。自己支持膜の組成と、特異結合に伴う蛍光強度分布の変化を詳細に観察することにより、ゲート効果の機構解明が進むと期待できる。

Fig. Distribution of the fluorescent distribution in D-Phe imprinted self-supporting membrane affected by the template or its enantiomer.

４．その他・特記事項（Others）

[1] Y. Yoshimi, et al., Anal. Chim. Acta 682, 110-116 (2010)

NIMS李香蘭氏に支援を受けた。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）

まだ予定していない

６．関連特許（Patent）

なし