利用報告書
課題番号 :S-15-NU-0024
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :分子ナノカーボン材料の開発と水素終端化シリコン基板上への自己組織化単分子膜の作製
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :田中啓之、坂本裕俊、尾崎仁亮
Username (English) :
所属名(日本語) :名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(ERATO伊丹分子ナノカーボンプロジェクト)
Affiliation (English) :
1.概要(Summary )
近年、一次元細孔などのナノ空間に包接された分子が、通常とは異なる化学的・物理的性質を示す例が報告されており、ナノ空間を利用することにより、新しい手法での機能性分子の開発が期待できる。こうした空間を作り出すためには、多孔性配位高分子に代表されるような、多孔性材料が有用であると考えられる。[n]シクロパラフェニレン ([n]cycloparaphenylene, [n]CPP)は、パラ位で互いに結合したn個のベンゼンからなるリング状分子であり、ベンゼンの数を変えることによってリング径を微細に制御することが可能であることから、細孔径の調整が可能な多孔性材料としての可能性を持つ。こうした観点から、実験者らは固体CPP分子にヨウ素を包接させ、その物理的性質について検討を行い、 ヨウ素を包摂した[12]CPP ([12]CPP⊃I2)が、温度変化に応じて、その構造を変化させることを見出してきた。本研究では、[12]CPP⊃I2の構造変化に伴う熱力学的な知見を得るため、示差走査熱量(DSC)測定を行った。
2.実験(Experimental)
本研究では、SII製DSC 6200を用いて、DSC測定を行った。[12]CPP⊃I2の粉末サンプルをアルミパンに封入し、空のアルミパン(リファレンスサンプル)とともに、試料室内に置いた。試料室内に乾燥窒素を30分間フローした後、160Kから340Kの温度範囲において、±10 K min-1で温度を掃引しながら、DSC曲線の測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
冷却過程のDSC曲線においては、特徴的なシグナルは観測されなかったが、昇温過程においては、270 Kから310 Kの温度範囲において、ベースラインのシフトが観測された (図1)。
図1. 昇温過程のDSC曲線。破線は高温側、または低温側のベースラインを示す。
このようなベースラインのシフトはガラス転移に特徴的な挙動である。XRDの測定により、CPP分子からなるフレームワーク構造は温度変化によって大きな変化を起こさないことがわかっており、DSCの測定において観測されたガラス転移は、ヨウ素分子の配列において生じていると考えられる。すなわち、ヨウ素は低温では秩序だった結晶相を形成するが、310 K以上では、無秩序相となる。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H. Sakamoto, N. Ozaki, K. Itami, 日本化学会第96春季年会, 平成28年3月26日.
(2) N. Ozaki, H. Sakamoto, K. Itami, 日本化学会第96春季年会, 平成28年3月26日.
6.関連特許(Patent)
なし







