利用報告書

分子内プロトン移動とスピン転移を発現する新規鉄二価錯体の磁気的挙動
中西 匠1, Su Shengqun1, Li JunQiu1
1) 国立大学法人九州大学 先導物質化学研究所

課題番号 :S-19-MS-1095
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :分子内プロトン移動とスピン転移を発現する新規鉄二価錯体の磁気的挙動
Program Title (English) :Magnetic behavior of new iron(II) complex exhibiting proton transfer and spin transition.
利用者名(日本語) :中西 匠1, Su Shengqun1, Li JunQiu1
Username (English) :Takumi Nakanishi1, Su Shengqun1, Li JunQiu1
所属名(日本語) :1) 国立大学法人九州大学 先導物質化学研究所
Affiliation (English) :1) Institution for Materials Chemistry and Engineering, The University of Kyushu

1.概要(Summary )
 熱、光、圧力など種々の外部刺激により構造、物性の変化を示す動的材料は、記憶材料やセンサーなど幅広い分野での応用が期待されている。申請者は最近、新たな鉄二価スピン転移錯体を開発し、この錯体がスピン転移に伴って非極性構造(高スピン状態)から極性構造(低スピン状態)に変化することを、単結晶X線回折測定により明らかにした。この様な結晶では、スピン転移と連動した分極発生という機能発現が期待できる。さらに、本錯体は100 K以下の温度領域での光照射により、低スピン状態から高スピン状態に変化し、且つその状態がトラッピングされるLIESST現象(Light-induced excited spin state trapping)を示すことが確認された。よって本錯体は100 K以下の温度領域において、極性構造(低スピン状態)から非極性構造(高スピン状態)への光スイッチングが可能であると期待される。そこで本研究では、50 Kにおける光照射前、後の構造決定を単結晶X線回折装置 微小結晶Rigaku HyPix-AFCを用いて行った。
2.実験(Experimental)
単結晶X線回折装置 微小結晶Rigaku HyPix-AFCに単結晶をセットし、50 Kまで冷却した後、光照射前の構造決定を行った。十分に質の高い構造データが得られたと判断された結晶に対し、532 nm緑色レーザーを1時間照射し、レーザーの電源を切った後、光照射後の状態の構造決定を50 Kで行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
光照射前の50 Kで得られた構造を解析した結果、空間群は極性構造であることを示すP21であり、錯体の中心金属イオン周りの結合長は鉄二価低スピン状態にあることを示していた。続いて、532 nmレーザーを
図1. 50 Kにおける光照射前、後の結晶構造
1時間照射した後の結晶構造を解析したところ、空間群がP-421cに変化し、また観測された錯体は金属周りの結合長から、鉄二価高スピン状態となっていることが明らかとなった。以上の結果から、本錯体はLIESST現象と連動した極性構造(空間群P21)から非極性構造(空間群P-421c)への光スイッチングが可能であることが明らかとなった。
4.その他・特記事項(Others)
本実験を行うに辺り、単結晶X線回折装置 微小結晶Rigaku HyPix-AFC装置担当者の岡野芳則 技術職員に大変お世話になりました。ありがとうございました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Nakanishi, Y. Hori, H. Sato, S. Wu, A. Okazawa, N. Kojima, T. Yamamoto, Y. Einaga, S. Hayami, Y. Horie, H. Okajima, A. Sakamoto, Y. Shiota, K. Yoshizawa, O. Sato, J. Am. Chem. Soc. 141(36), 14384-14393 (2019).
(2) 中西 匠, 佐藤 治, 錯体化学討論会第69回討論会 令和元年9月21日 (発表番号:1Fb-01)
6.関連特許(Patent)
なし

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